「提案書が無料扱いされる」と嘆く前に。LIGの制作コンセプトから学んだこと

ども中村です。

つい先日、秋葉原のGARAGEで毎週開催されている「ワンコインカレッジ(=通称ワンカレ)」にLIGのディレクター陣が登壇するとのことで、ディレクターズマニュアルの中の人としていてもたってもいられなくなったので行ってきました。

いやはや、LIGってふざけてるだけじゃないんですね(当たり前ですが)。そこそこビックリしました。

ふざけてるけどフザケてない 真顔で愛を叫ぶLIGディレクター

今回登壇してくれたのはLIGの鮫島さん(右)と溜水さん(左)。それぞれ普段はボッケボケで、溜水さんは当日思いっきり携帯紛失していましたが、制作・ブランディングにおいて多くの実績を持つ凄腕ディレクターです。
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以下に紹介する彼らの実績を見るだけでも、おふざけ&ノリ万歳”だけ”では到底作れないハイレベルな仕事をやっていることが分かるかと思います。

○鮫島さんと溜水さんの担当案件(一部)

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東京マイルドファウンデーション
http://tokyomildfoundation.com/

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「おーいお茶」リブランディングサイト
http://creative.itoen.co.jp/

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魔女の宅急便 実写版PS
http://www.majotaku.jp/

うーむ。どのサイトも非常にインタラクティブで、かつしっかりとコンセプトとメッセージが伝わってくる良いサイトですねぇ。

いやしかし…これほどの提案を通し、予算を確保し、「うまいことカタチにする」ってのは相当大変な仕事のハズ。

常にハイクオリティなサイトを作り続けるためにLIGは一体どんな手法を使っているのか…非常に気になります。

[LOVE] LIG Creative Mind LIGの掲げる本質的制作コンセプト

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はい。なんだかわけのわからない見出しですが、これが驚くほど深い意味を持つ「LIGの制作コンセプト」なんだとか。

彼らにとってクライアントは「仕事の依頼主」でも「顧客」でも、ましてや「現場の敵」でもなく、あくまで「パートナー♥」。

この考え方でいくと、成果物(クリエイティブ)はつまり「パートナーとの間に生まれた子供」といった認識になり、成果物に対する想いや興味、深い考え、ディティールまでこだわることが約束できるのだとか。

なるほどうさんくせーな。

と、まぁ言いたくなったりもしたんですが、ちょっと考えてみるとこのコンセプトがいかに効率よく作り手の”良いモチベーション”を作り上げているのかが分かってきます。

ちょっと以下でその辺解説してみますね。

これまでの制作現場で行われてきたモチベーション管理

誰でも、どこの現場でも、一度はクライアントに対しマイナスの感情を抱いたことがあるはず。

「あの野郎!」だったり「どうしてこうなるんだ!」だったり、「ふざけんな!」だったり………。

これまで一般的なモチベ管理手法では、このマイナスの感情に対し一種否定の言葉をカウンターであてることでなんとかしてきたように思います。

例えば

「クライアントを敵として捉えるな」
「プロなら細部にこそこだわれ」
「期待を超えてみせろ」

とかね。

いや何もコレ自体が悪い…というわけではないと思いますが、LIGの制作コンセプトは多分こんな感じの対処療法的な手法よりもうちょっと上にあるんじゃないかなー?

なんて感じたわけです。

LIGの [LOVE] 制作コンセプト構築フロー

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さて前置きが長くなりましたが、以下でその具体的なワークフローについて解説してみます。

彼ら曰く、そのやり方は「制作のフローを”愛を育むフェーズと重ねるんです”」だとか。

うわーうさんくせー。と言わずにぜひ見てみてください。

愛(=企画・提案)を生み出すには?

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例えばヒアリングにおいて、強みや弱み、企業文化、ロゴにこめた願い、など数百にもおよぶ情報を「聴かなければいけないたくさんの条件」として捉えてしまったら。

それはきっと【膨大なタスク】として作り手には映ってしまい、モチベーションが上がりにくくなってしまう。

けれど、ここに[LOVE]というコンセプトを持ち込めば、「熱い恋愛をしようと思ったら相手の事をとにかく良く知らなくちゃ!」

といった感じでチーム内でいつのまにか「聞かなくちゃ」⇒「聞きたい」へと心理の変化が起こりやすくなるんだとか。

本当かよ…。と言いたくもなりますが、なんとなく理解もできます。たしかにこれを実行できるなら、デザイナーもエンジニアも熱中してくれそうな気がしてきます。

企業分析だけで1ヶ月?!つきぬけた「中間成果物」のクオリティ

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業界分析、ペルソナ分析、インサイト、コーポレートブランディング、コンセプト…

実際に聞き出せた様々な情報をとりまとめ、企画に落とし込み、そして提案資料などの中間成果物として形にしていくのって大変です。

むちゃくちゃ手間がかかる部分ですし、どうしても面倒になりがち。

LIGではここでも「愛するあのコのために!」的精神で、徹底的にこだわりぬいたモノづくりを行っているんだとか。

具体的には、クライアントにとってのエンドユーザー層へ実際のインタビューを敢行し、実に一ヶ月~数ヶ月もの時間と手間をかけてものすごいクオリティの資料を作成しているんだとか。(実際見せてもらいましたがヤバかったです)

まだこの時点では「何をどう作るか?」すら決まっていないにも関わらず、デザイナーやディレクター、マーケティング担当などが本気になって資料の作成にのめりこむ。

そのため、この段階で「知れば知るほど好きになる」という心理的な動きがチーム内で生まれていくんだとか。いや、よくできてるなー。

もちろん資料作成はそれなりのお値段。それを納得させる”資料のクオリティ”

実際の現場では「資料作成に1ヶ月かかります!だから○○円です!」と伝えることで難色を示すクライアントもやはり多いそう。

しかし、そこでも『圧倒的なクオリティを誇る過去の資料事例』などを見せることで「なるほど。そりゃそんくらいかかるよね」という着地点にもっていくことができるんだとか。

ディレクターとクライアントとの間で「同じ方向を向かせる」ための資料を徹底的に作りこむ。

ここにこそLIGが高品質なアウトプットを行っていける秘訣があるんでしょうね。

子供との愛を育む?自然と生まれる「親心PDCA」

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さて、そんな調子で制作がすすんで行き、パートナーとの愛の結晶となる成果物がローンチされました。

すると、今度はチーム内で自然と「生まれた子供(成果物)は”親として育てていかなければならない”」という意識が芽生え始めるんだとか。

「これから必要なスキルだから」とか「解析くらいやらないとこの先勝ち残れないから」なんて上から命令されるより、はるかに”自分事”として数字や改善を意識させる。

もうここまで話を聞いていれば、「愛とかうさんくせーw」とは言えなくなっていました。

失敗も子供(サイト)にとって良い経験になる

講師の鮫島さん曰く、とにかく日本人は失敗を恐れすぎてしまい「なるべく影響が少ないように」判断をしてしまう傾向があるんだとか。

それは作り手もクライアントも一緒。

けれど、それこそ時には怪我を恐れず喧嘩を恐れず「一緒に成長していく気持ちを大切にしないと」らしいです。

もうなんか鮫島さん完全にお父さんの顔してました。独身のくせに。

聞いたことをまとめてみる

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今回のセミナーで学べた「無理の無いモチベーション・コントロール」ですが、ぶっちゃけそれ自体はそこまで珍しいものではないのかもしれません。

が、そこに「愛」という若干こっ恥ずかしくなるような、それでいてちょっと笑ってしまうようなネーミングを持ってきて、『現場の空気ごと柔らかくしてしまう』コピーに仕上げたLIGはやっぱりさすがだな。なんて思いました。

もちろん、LIGらしくおふざけコンテンツ(放送禁止用語出てたけどw)もちょいちょい入った楽しい講演会だったんですが、その実内容は特濃。

今後は実際の現場を動かす制作メンバーからもどんどん情報を発信していくそうなので、ますます目が離せない存在になっていきそうですね。

※ついでに一緒に写真入っていただいた岩上社長あざっしたー。

株式会社LIG(リグ)