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A3RTを生んだリクルートテクノロジーズに聞く、AIを社内に導入するという意義

おはようございます、河村です。

株式会社リクルートテクノロジーズが「A3RT」を無料公開し、デジマラボでも実際に試した記事を公開しました。
>> リクルートがAIをまさかの無料公開。さっそくすべてのAPIを試しまくってみた

A3RTとは
文章のカテゴリ判別・文章校閲・レコメンドなどの用途で、リクルートグループ内で活用されていたAIを用いた機能群の総称。2017年3月に、6つをAPIとして無料で一般公開した。

A3RTはすでにリクルート社内で使われている。ということも以前紹介しましたね。

ですが、

  • どれくらい効果をだしている?
  • どれくらいのコストがかかったの?
  • 中小企業でもAI活用はできるの?

など、気になることはたくさん。

ということでA3RTの開発元である株式会社リクルートテクノロジーズに取材してきました。

今回、お話を伺うのは

石川信行:リクルートテクノロジーズITソリューション統括部ビッグデータプロダクト開発グループマネジャー。A3RTプロジェクトの統括者。
奥田裕樹:リクルートテクノロジーズITソリューション統括部ビッグデータ部所属。PublicAPI担当者。

のお二方。よろしくお願いいたします。

すでに実用フェーズ。単純な仕事はAIで削減可能

―早速ですが、無料公開されたA3RTはリクルート社内ではどのように活用されているのでしょうか?

―石川
程度の大小はありますが、リクルートグループのさまざまなサービスで使われています。

効率化の面でいえば、Proofreading APIなどが既にリクルートのメディアで活用されています。具体的には、校閲の部分などで誤字脱字、送り仮名、漢字などの間違いを指摘してくれます。こちらは実際に、大きな工数削減につながっていますね。

マーケティング・コンバージョン向上の面でいうと、あるマッチングサービスではListing APIを利用しています。マッチングのレコメンド部分で活用していますね。

  • Proofreading API:文章の誤字脱字などの怪しい箇所を検知するためのAPI
  • Listing API:ユーザーへのレコメンドやターゲティングメールのためのリスト生成をするためのAPI

すでにグループ全体でA3RTが使われているんですね。なかでも、すでに人間の仕事をAIで削減できている点は驚きです。

ただAIが解決できることとできないことって、仕事内容によっても分かれそうな印象があります。どういった仕事がAIの得意分野なんでしょうか。

―奥田

結果がわかりきっている問題・過去の経験から判断がしやすい問題がAIには向いていると思います。

たとえば「この文章は、営業職に関わる文章だ」「この口コミは暴言が多いから、掲載できない」といったような判断。
AIは、何かを判別するといったことがとても得意ですね。

経営の意思決定のようなマクロな問題の判断はまだできないですが、ミクロで単純な判断は、もうAIに置き換えられると思っています。

なるほど。単純な作業は機械に任せて、複雑な仕事に人間が集中できる……といった感じでしょうか。

ちゃんとナレッジを見える化し、しっかりと貯めることができれば、AIに代替させられることも多くなるということですね。

―石川
その通りです。もう一つ、仕事を減らしてくれる以外にも、組織の属人化を防ぐというメリットがあります。

もしも勤続30年のベテランが突然いなくなったときって、かなりリスクが大きいですよね。
でもナレッジを蓄積し、AIに代替できるようになっていれば、「あの人が退社しちゃったから業務が回らない」なんて事態は起きません。

属人化を防ぐということは、組織の存続性・再現性に貢献してくれるということですね。

属人化の問題って、多くの企業がなかなか向き合いきれなかった問題。AIは、組織内の暗黙知を放置しっぱなしだった状況を、考えなおすキッカケにもなる……いろいろ勉強になります。

こんなにメリットがあるなら、AI導入してみたい! と思う企業は多そうですが、とはいえ導入にあたって、具体的にどういったことが課題に挙がってくるんだろう、ってのは悩みどころなはず。

そのあたり、引き続き聞いていきます。

AI導入前に、人間が考えなきゃいけないこと

―率直に開発工数の話など伺いたいんですが、A3RTの開発は、どれくらい大変だったんでしょうか?

―奥田
膨大な工数がかかりましたね。われわれの場合、フルスクラッチ開発で1つのプロダクトに対し3~5人チームで、多くのプロダクトは試行錯誤を繰り返しながら最短でも半年、大抵は少なくとも1年間ぐらいはかけています。

それももちろん、汎用AIを作っているわけではなく、ニーズがあった上での開発です。

―奥田
ただ意外にも、工数のほとんどは要件定義が占めているんです。流行りや手軽さに惑わされず、問題に適した技術を正しく選ぶことが、とても大事です。

どういったところで、どういう形で使うのか?」という現場とのすり合わせは、とても大変でした。

ニーズが明確だとしてもその期間ですか……。

AIといえども、人間が設計してあげなければいけないもの。設計が終わっても、大量のデータを集めたり加工したりと、すごく地道なことが多かったんだとか。

実用に耐えうるAIをつくりあげるためには、人間の努力がとても大事なんですね。

「AIがあれば、ぜんぶ何でもやってくれる」なんて、よく勘違いしている人々も多いですが、そんなのが幻想だということを改めて思い知ります。

―石川
重要なのは「AIを使う」ということではなく、「何を解決したいのか」という点ですね。

AI含め何でもそうなんですが、技術って武器でしかないんですよ。

課題を明確にした上で「どういう武器を選べば、その課題を解決できるか?」ということをしっかり考えるのが大事だと思います。

たしかに、「AI使って何かやりたいんだけど」っていう曖昧なニーズは多いと思います。

課題を明確にするのももちろんですが、本当にAIを使うべきなのか、という点も考慮する必要がありますよね。

AI導入で大事なのは、結局“人”

―実際にAIを導入する際に、重要なポイントってなんでしょうか?

―石川
ずばり、チームのコミュニケーションですね。

これまでの業務を、明文化・細分化して、自動化できるまでに落とし込む。これをきちんとできる組織だけが、AIを導入できます。

結局、“人”なんです。

これは意外な回答……。

さらに詳しく伺うと、チームによっては工数削減どころか、AI導入しても全然効果なかったなんてケースもあるらしいです。

たしかに、いざ「AIで業務を自動化します!」と言っても、

  • この業務のノウハウって、誰が持ってるんだっけ?
  • あちこちにちらばってる情報を、どうまとめる・誰がまとめる?
  • そもそもメンバーは協力してくれる?

など、懸念事項はたくさん。本当に改めて、AIは自分たちの組織を見直すキッカケなんですね。

―石川
AIはブラックボックスだと言われますが、人間の組織もかなりブラックボックスです。

日頃やっている業務のなかには、単純で、じつは自動化できるものってたくさんあります。
それなのに、まだ手作業が多かったり属人化してしまったり……。

理由は明白です。ただ単に、自動化できるところまで落とし込もうとしていないだけなんです。
「AIに置き換えよう」という観点をもてば、働き方はおのずと変わってくるはずです。

暗黙知を、見える化しよう」ってことは、かなり前から言われてたことですが、実践できていた企業って本当に少ない。

『働き方改革』という言葉に懐疑的な声も多いですが、AIの登場によって、実は強く意識しなければいけないキーワードなのかも。

さて、ここまで伺って気になるのはリクルートテクノロジーの今後のAI展開ですが……

―石川
いろいろありますが、やっぱり地に足をつけていくということが一番ですね。
AIって武器にしか過ぎなくて、解決すべき課題があって初めて効果を発揮するものです。

AIってワードに対する期待感って高いと思うんですが、我々はとにかく現場に寄り添って、現実に起きてる課題に向き合うソリューションを提供していきたいですね。

―奥田
そうですね。

我々が目指していることはデータを使って、価値を作り出すということ。

バズワードに惑わされず、今後もこれを堅実にやっていきたいです。

AIの設計や、組織内の情報を集めたり、どういうデータが使えるのか考えたり……。
技術を現場の“武器”として使えるようにするまでには、やっぱり人の力が必要。

魔法の道具かのように思われているAIですが、AI導入成功のためには、人間が知恵をしぼり、自分たちのことを見直す必要もあるんですね。

自分たちの業務を見直すこと、ついサボりがちですが、すごく大事ですよね。デジマラボ内でも意識しようと思います。

石川さん、奥田さん、この度はありがとうございました!


ちなみにリクルートテクノロジーズでは、A3RTのAIをより良くしたい・現場に役立つ“武器”をつくりたいエンジニアの方を歓迎しているとのこと。気になる方は下記リンクからどうぞ。

>> 株式会社リクルートテクノロジーズ採用ページ
>> 株式会社リクルートテクノロジーズお問い合わせページ

河村 健司 by
ライター兼エンジニア。海外でのフロントエンドエンジニア経験を経て、ビットエーへ。主にチャットbot関連の情報を追いつつ、自分で試しつつ、なんなら自分でも組んじゃう。なんてことをやったりする。