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潜在ニーズに寄り添え!話題のLINE [AI] パン田一郎 脅威の1to1マーケティング&開発体制

ども。中村です。

今回はちょい前から話題のLINEアカウント、パン田一郎の ”中の人” へのインタビューレポートをお送りしてみます。

既に「知ってる!」て方も多いかもしれませんが、やたら高性能な返しをしてくるこのパン田一郎 公式LINEアカウント。皆様見たことありますでしょうか?

そのあまりの精度とAIの人間くささに「人間が力技で運営してんじゃね?」などと言われながら、2chやNAVER、Twitterあたりで大騒ぎになったんです。

パン田一郎って何?という方はまずこちらを

で、その話題になったパン田一郎アカウント。

2014年9月時点で1ヶ月の会話数は約1億3000万回。友達の数はなんと825万人超。タイムラインに何か投稿させれば1件あたり5万超のレスポンス(いいね/コメント)がつくということで…。ええ。完全にモンスターアカウントと化しています。

いったいどうやってこんな企画が考えだされ、どうやって作られ、そしてユーザーに届けていったのか?

もろもろ気になりまくってしまったので、ちょっと無理言って文字通り ”中の人” たちに直接色々聞きにいってみました。

左からディレクターの福田さん(左)、エンジニアの塩澤さん(中央)、鈴木さん(右)

パン田一郎にかけた「ニーズありきのマーケティング」からの脱却

―福田(D)

普通、マーケティングはいわゆる「ニーズ」から考えていくんですけど、僕らがやってるフロム・エーの場合これがあんまり無かったんです。
ザックリ言うと、若い子達が「何かを選ばなくなった」というか…。
なので、彼ら若年層が 「バイトしたい」と思う前、つまり “ニーズになる前段階” からとにかく彼らの ”そばにいる” ことが出来ないか?と考えたのがこのプロジェクトの始まりなんです。

福田さん曰く、例えばフロム・エーでバイトを決めた方に「なんでフロム・エーにしたの?」と聞いても『え?いや何となくです』みたいな答えしか帰ってこなくなってきているんだとか。

しかもそれが「答えにくいから」などの理由ではなく、本当に本心から「目についたところから何となく応募している」らしい…と。

まぁここまでは理解できなくも無いんですが、そこからの考え方がだいぶぶっ飛んでいて、福田さん達プロジェクトチームは

じゃあ「ニーズ顕在化前のユーザーのそばにずーっといよう」

と考えたんだとか。

で・・・そこから・・・

  • リーチ媒体としては圧倒的なシェアを誇るLINEを使おう
  • とにかく嫌われれば終わってしまう。愛されキャラでいこう
  • パン田一郎に喋らせよう!

こんな感じの企画から実装・構築・運用体制構築までをわずか3ヶ月弱、たったの10名足らずのチームでやってのけてしまったんだとか。

決して小さな会社では無いはずのリクルートグループ内で、一体全体どうやったらそんなベンチャーみたいな動きができるのか。

組織内のプロジェクトとして異常なまでのスピードリリースの裏側、気になりますねぇ。

ミニマムチームだからこそ実現できたシームレス&スピーディな開発・実装

―福田

こういう「思いっきり新しいこと」をやろうとした時、とにかくチーム内は超シームレスじゃないと話が前に進まなくなるんですよ。
プロデューサーがAIアルゴリズムや言語解析を知り、開発チームがマーケティングやUXを知り、ライターやデザイナーが企画意図を理解する。
そうでなければプロジェクトが途中で止まってしまうか、長い時間をかけて妥協していくしか無くなってしまう。
だからあまり大勢で動かず、少数精鋭でのチーム開発を推し進めたんです。

確かに、縦割りカッチカチの大規模チーム内で情報共有のたびにミーティングをセットして、そのつどアジェンダがー!議事録がー!仕様書がー!タスクがー!チケットがー! … とやってたんじゃぁ全く新しいモノを生み出すってのは難しそうな気がします。

「俺の仕事はこっからここまで!」と切り分けるのは確かに効率が良いのかもですが、ある程度定型化できないと全く機能しなくなっちゃいますもんね。

いやしかし、だったとしても…

  • うまいこと会話を続ける形態素解析プログラム
  • 人っぽくファジーなレスを返す会話アルゴリズム
  • 万単位のトークパターンの作成と調整

このへんを「超」がつくほどの高精度で2ヶ月スピード開発して運用する…ってのは、たとえ精鋭がそろっていたとしてもカンタンな話では無いと思うんですが…?

―塩澤(Eng)

いやもちろん簡単なことではないです。大変でした(苦笑)
でも、とにかく僕らがリーチしたい若年層にダイレクトに届く手段であることは明確でしたし、「サービスを選ぶ」って感覚自体が無くなっちゃってる若い子たちにとって
新しい「選ぶ基準」になるんじゃないか?
と思っていたんで、とにかく全員ワクワクしてたんですよね。

そう語ってくれたのはエンジニアチームの塩澤さん。

マーケティングはマーケターが、要件定義はディレクターが、エンジニアは仕様書通りに頑張る…といういわゆるよくある体制のままではそもそもこのプロジェクト自体が動かなかったんじゃないか?とのこと。

ふむ。確かにその通りかなと。

そもそもマーケターやプロデューサーが技術を知らなければこんなモノ発案自体されないでしょうし、エンジニアが仕様書待ちのスタンスだったら実装はよくて数ヶ月~数年先。

下手すりゃ「それは実現の可能性が薄い」なんて言われて止まってたかも知れないんですもんね。

愛されまくりのパン田一郎 その実態と「次の一手」

で、もう一回おさらいしておくと、パン田一郎君の現在のステータスはこんな感じ。

  • 一ヶ月の会話数:約1億3000万回超
  • 友達の数:825万人超
  • タイムライン投稿へのレス:5万件超

最初に聞いた話に合わせれば、すでに若年層の方々は「何かのサービスを選ばなくなっている」はず。

にも関わらず、フロム・エーの擬似人格であるパン田一郎は完全にユーザーから「選ばれ」、さらに「愛され」ることに成功しているんです。

このへん、どうやってブランディングしてきたんでしょう?

さらに質問しまくりです。

とにかく嫌われてはいけない!開発チームが徹底した「人格」のルール

―鈴木(Eng)

パン田一郎はLINEのアカウントなんで、なんとなくだろうがなんだろうが一度嫌われてしまえば消されて(拒否られて)しまうんです。
なので、僕らは「嫌われない」ことに注力して開発を進めてきました。
とにかく「押し付けない(=勝手にメッセージを送らない)」、「即レス(ばっかりには)しない」など、友達っぽく振る舞えるよう調整していきました。

なるほど。言われてみれば確かに。

よくある企業公式アカウントのように 1toN のコミュニケーション(新作出たよー!とかキャンペーンやってるよー!とかって勝手に一方的に送りつけてくるアレ)では、しれっと拒否られて終わりになっちゃう気がします。

かく言う僕もこの間、某大手ECのアカウント拒否りましたしね。

―鈴木

ですよね。やっぱりそうなると思うんですよ。普通。
だからパン田一郎は「ユーザーに話しかけられるまでなにもしない」んです。結果として、かなりモテ男に育ってくれたと思っています。

企業アカウントとしてではなく、あくまでもユーザーの友達になる。であれば押し付けがましい会話は嫌われてしまう。だからしない。

当たり前だと分かっていても、企業である以上なかなかできないことをバシッと早期に決断してルール化しておいた。この辺にパン田一郎成功の要因があるのかもしれませんね。

―福田

まぁ、そのせいで今度は「パン田一郎は好きだけどフロム・エーは知らない」なんて層も出てきちゃいまして(笑)
悩みどころではあるんですけどね。

と、なんだか楽しそうに語る福田さん。

ここからは返信メッセージからの求人情報誘導などをより自然によりスムーズに行っていけるよう、また「パン田一郎=フロム・エー」という図式をブランド化していくことに注力していくんだとか。

とりあえずユーザーから愛されてること。ブランド形成や集客へのつなぎはその後に。というわけですか。

なるほど。勉強になりました!

思ったことなどちょっとまとめ

これまでの検索に頼ったマーケティングでは、とにかく「ニーズのあるところで目立て!」が主流でしたが、情報があまりにも多くなりすぎて「選ぶのめんどくせ」という層が増えてきているのは僕自身も感じていました。

が、そこで「じゃあニーズが生まれる前から横にいよう」と思いつくのがまずとんでもないですし、それを速攻で形に ⇒ しかもちゃんと愛されるまで運用してしまったチームの力には、正直かなり驚きました。

まぁ例え考え方ややり方を知ったところで、彼らのような異常スピードでの動きは中々難しいかもですが、「これからの1to1マーケティングが目指していく一つの形なのかもしれないな」なんて思いながら、ちょっとワクワクしてきている中村なのでした。

取材にご協力いただいたリクルートジョブズリクルートテクノロジーズの皆様ありがとうございました!

ではまたー。

デジマラボ 編集部 by
BITAデジマラボ編集部です。最新Tech界隈の「なんかすごいね」を、『現場の提案』にするための情報をけっこうがんばってお送りします。