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「どこでもストア」がVRビジネスの常識を塗り替える。NURVEが提唱する“買う体験の進化”とは

「VRといえば、ゲーム」という印象が一般的に強いですよね。

VR×ビジネス活用という話題も聞くには聞くけど、なんだかパッとした事例がない。「本当にビジネス活用なんてできるの……?」と疑問をもつ方、多いかと思います。

そんななか、圧倒的な完成度のVRビジネス活用構想を掲げる、NURVE(ナーヴ)という企業があります。

この企業、とにかくすごいの一言。これまでのVRの常識を捨て、「どうすればソリューションとして有用か?」ということを徹底的を考え抜き、独自にハードウェアまで開発。
6月末にはさらに新しい製品も発表し、今後も目が離せません。

というわけでさっそく取材してきました。今回、お話を伺ったのは代表取締役 多田英起さん、よろしくお願いします!

VRで物件内見。リモート化することで得られる多くのメリット

―さっそくですが、御社のサービスについて教えてください!

―多田
まず、VR内見からご紹介させてください。

VR内見は不動産会社向けのシステムソリューションです。VRによって、その場にいなくても部屋の擬似内見を体験することができます。

ただ単純にVRにしただけではなく、このシステムでは“お客さまが今どんな景色を見ているか?”を、管理画面からリアルタイムで確認可能です。
ですので、VR内見と接客が同時にでき、効果的な接客が可能になります。

▲イメージ映像はこちら。

面白いですね! 一般的なVRだと、体験者はVRの世界に篭ってしまいますが、きちんとそこも考えられています。効率化も実現しつつ、大事な接客部分もカバーできるとは……。

「やっぱり内見は実際に行って見聞きしたい! けど、時間もかかるし手間……」

VR内見は、そういった消費者の課題を上手いバランスで解決している気がします。

『どこでもストア』で、部屋さがし体験が劇的に変わる!

―多田
先日、「どこでもストア」というサービスも発表しました。
VR内見を無人KIOSK端末として発展させたものです。こちらは、完全な遠隔接客になります。

ショッピングモールなどの商業施設に配置し、ショッピングのついでに利用できるような想定です。

不動産屋に行く必要すらないってことですか……! すごく便利ですね。

▼実物の写真がこちら

どこでもストアの1号店は、『イオン品川シーサイド店』にオープン。写真の機体はイオン特別カラーなんだそう。

ただ、完全無人・完全リモートになっても、接客部分へのこだわりは無くなっていませんでした。実際の画面を見せていただいたのですが、下記のようなカンジです。

▼ユーザーがみる画面

画面右下には、対応しているスタッフの顔が表示されます。

▼システム管理画面

きちんとスタッフの顔も見えるので消費者にも安心感を与えられそう。さらにWebブラウザだけで動くシステムとのことなので、対応デバイスの心配もいらなそうですね。

ずばり、ビジネス観点でみたときのリモート化のメリットとはどんなところでしょうか?

―多田
まず、店舗を設ける必要がない・人員が多く要らない、という物理的なコスト削減が1つです。
導入企業は、応対の波があるときだけ着席すれば良いので、純粋に使える時間が増えるかと思います。

たしかに、物理的コストって大きい。店舗であれば、備品の搬入・撤去にもコストがかかるし、お客さんが一切来ない時間帯でも人が店舗に居続ける必要があったり……。そういった物理的な課題からされるのは、企業にとって嬉しいですね。

―多田
そうですね。さらには人材の物理的ギャップも埋められます。

たとえば旅行代理店の話ですが、旅行のスペシャリストは大抵、東京にしかいなんです。なぜというと、東京の需要の数が圧倒的だからです。

旅行は全国に需要があるはずなのに、これでは大きな機会損失ですよね。

こういった課題もリモート化することで解決できます。

機会のロスも少なくできるのは驚き。参加できるスタッフ人数も多くなりそうです。

なお、どこでもストアの1号店は不動産のコンテンツのみですが、今後は旅行・自動車などの業種にも対応していくとのこと。そちらの展開も楽しみ!

VRゲームの常識は、ビジネスでは通用しない

―VRゴーグルも独自で開発されているんですよね。詳しく聞かせてください。

―名前
私たちが開発しているのは、『クルール』という名前のものです。

一番の特徴は、ビジネスで使えるVRゴーグルを目指して開発している点です。

このクルール、ディスプレイ部分をクルっと回転させられるのが名前の由来とのこと。
なんでも、VR内での視点操作UIがユーザーに馴染まなすぎて、多くの人が慣れている画面タッチで操作できる設計にしたそうな。

 
▲ タッチ操作してから、ディスプレイ部分を回転させてすぐにVRを見ることが可能

従来のVRゴーグルだとヘッドバンドがありますが、クルールだと手で持つ形なんですね。どうしてなんでしょう?

―多田
VRゲームでは没入感が大事だと思いますが、クルールがいるのはビジネスの現場です。そこでは、没入感はあまりいらないんです。

バンドをして周囲が見えない状態にされ、荷物も心配になる……。そんな不安な状況で購買決定ができるわけがありませんよね。

心理的な部分も考えられているとは……。すごいこだわりです。形状もなんだか珍しいですよね、これにも工夫があるんでしょうか?

―多田
くぼみ部分が影を光を遮断するので、顔を密着させる必要がありません。

この部分の大きさもかなり調整されていて、メイクをつけた人や眼鏡をつけた人でも、そのままVRが体験できます。

 
▲くぼみ部分は眼鏡も収まる大きさ。筆者も眼鏡装着したままでVRを体験できた

従来のVRゴーグルは、取り外しが面倒・VRゴーグルが重い・フェイスマスクをつけるなどユーザーに負担をかけることも少なくありませんが、クルールではこのデザインのおかけで取り外しが楽。なので、非常に回転率が高くなり、行列も滅多にできないんだとか。

VRで消費者の購入体験が変わる。“買う”という体験を進化させたい

―効率化のほかに、VRにすることで消費者に与えられる価値・インパクトとはどんな点でしょう?

―多田
遠隔購入の納得度・満足度が、劇的に変わることですね。

ITの発達によってネットショッピングは広く普及しましたが、買うという体験は依然進化していないんです。
実際、“買ってから後悔する”ということは絶えないですよね。

たしかに、商品レビューをみるのに多く時間を費やしても、商品が届いて「あれ、想像と違う……」ということが何度もあります。VRでは事前に体験できるので、納得してから買える、ということですよね。

―多田
その通りです。
結局、人は体験したことしかわからないんですよね。

さらに、非言語的な要素・感覚的な要素をプレゼンできるという点が決定的なところです。
世の中って、意外と“感覚”の世界なんですよ。

―多田
たとえば、部屋が「広い」という感想1つとってみても、基準は人それぞれです。
間取り図的には広くなくても、天井の高さが「広い」という感覚を生み出すこともあるかもしれません。
結局「広い」とはどういうことなのか、だれも言葉では説明できません。

そういった要素は、やはり体験するしかわからないんです。
私たちはこのVRの取り組みを当たり前化し、購入体験を“進化”させたいです。

なるほど。いままで困難だった物理的ギャップを超越し、いつでもどこでも“感覚”を提供可能になったところにインパクトがあるというわけですね。

さらに多田さんによると、“感覚”といった非言語的な情報を機械が扱えるよう、VR内見でのディープ・ラーニング活用も初めているのだそう。
VRのビジネス活用だけでも驚きですが、すでにVR×AIも実践しているとは……! 「流行ってるからなんとなく」ではない、理由のある活用。徹底的に、消費者の購入体験にコミットしていますね。

ディープ・ラーニングを用いた画像認識は、機械が自動で物体の特徴を学習します。
人間が見つけられない特徴も、機械なら見つけ出せることも。感覚的なもの・言語で説明しきれないものを構造化するのに、ディープ・ラーニングは現在最適な手法といえますね。

※わかりやすい例でいえば、非言語情報を機械で扱えるようになると、自動ラベリングや、Googleのような『画像で画像を検索する』みたいなことができてしまいます。

「常に未来を見てきた」圧倒的な戦略で、市場に挑む

―システムとハードウェアの完成度もさることながら、構想が素晴らしいですね……。競合っているんでしょうか?

―多田
いないでしょうね。
なぜかと言うと、他の企業を一切意識していないからです。

―多田
さきほども言いましたが、VRでの購入体験を当たり前化したい。
私たちが見ているのは、それが実現した未来です。常にそれを基準に考えてきました。

だからいま存在する企業は見ていません。
私たちは“5年後の当たり前”で市場に勝負を挑みます。それは品質だけじゃなくて価格も同じです。

最高の価値を、最安値で提供する。シェアを取りきり、スタンダードになるつもりです。

素晴らしいビジョン……。お話を伺うと、ビジョンに共感されて導入した企業も多いのだとか。なんだか納得です。
ここまでビジネス実用をひたすら考えぬいたUI/UXであれば、スタンダードになる可能性がかなり高いと感じました。日本どころか、世界標準になりそうな気すらしています。ぜひ、VR×ビジネスでの覇権を握っていただきたい……!

多田さん、お忙しいなか誠にありがとうございました。
 

ビジネスの場では、言語化したり説明可能であることが重視されますが、改めて考えると消費者はけっこう感覚で買い物をしています。(私自身、高い家賃でも結局、オシャレな部屋を選びました)
今回出たVR×AIの話が顕著ですが、“ビジネスにおいて感覚といった部分にスポットを当てる”。技術の発展とともに、そんな視点が改めて必要とされているのかも。

VR×ビジネスでももちろんのこと、そういった観点でもNURVEは今後、規範になるような取り組みを見せてくれそう。要注目ですね。

岡田 孟典 by
AIのリアルを追う、“やってみた”ライター兼エンジニア。過去には、海外向けにチャットボットをリリースした実績もある。エンジニアとしての成長も目指して日々奮闘中。