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AIのビジネス活用、日本が直面している課題とは? Deep Learning Lab #3

以前にもレポートしたDeep Learning Lab、なんと現在、第3回目にして参加者300人規模になるほどの盛り上がりを見せています。“AIのビジネス活用促進”が目的のこのコミュニティイベント。今回もプロフェッショナルの方々から、かなり濃いお話が聞けました!

Deep Learning Labとは
MicrosoftとPreferred Networksが共同で立ち上げたコミュニティ。
“AIのビジネス活用促進”を目的としてさまざまなイベントを展開。
詳しくは第1回目のレポートへ

今回のタイムテーブルは下記の通りです。

セッションテーマ 登壇者様
PFN 深層学習事例紹介、PFN/MSアライアンス テクノロジーアップデート 株式会社Preferred Networks ビジネス開発担当 渡部 創史 様
人材不足を抜け出す企業の2つの戦略 株式会社STANDARD 代表取締役 石井大智 様
AI ガイドラインセッション 法務編 株式会社Preferred Networks CSO 丸山宏 様
IJCAI17 最新情報セッション 株式会社UEI 代表取締役社長兼CEO 清水亮 様
Chainer MN 正式版 リリース 株式会社Preferred Networks 福田圭祐 様
AI導入ケース紹介&DLラボ分科会のご案内 SCSK株式会社
AIビジネス推進室 副室長 帯津勉 様
コミュニティアップデート 日本マイクロソフト株式会社
深層学習パートナー担当 廣野淳平 様

※ スライド資料は下記URLから
https://dllab.connpass.com/event/62925/presentation/

今回のイベントで印象に残ったのは人材・教育・法体制といったまさに、AIをビジネスに活用するにあたり課題となっている要素のお話でした。

本記事では、そこにフォーカスを当ててレポートしていきます。

圧倒的な人材不足。若い学生の力がカギに

東京大学を拠点として、AIの勉強会を行う学生団体HAITからスピンオフ起業した株式会社STANDARD。代表取締役の石井大智さんからは、日本のAI人材不足の現在や同社が行っている取り組みについてお話してくださいました。

不足が騒がれるAI人材ですが、経済産業省の調べによると、AIも含めIoTといった最先端技術を扱える「先端IT人材」は2016年時点では約1.5万人不足している状況。さらに2020年時点には約4.8万人にもおよぶ見込みなんだそう。

こうした課題に対し、株式会社STANDARDが、行っているAI人材育成の取り組みが大きく下記の2つ。

社内研修: toB向けにトレーニングプログラムを提供
学生マッチング: 学生をトレーニングし、実際にAI企業に対してインターンを輩出

学生マッチングについては、実際にAlbert、ABEJA、FRONTEOといった企業にインターンを輩出し、実務で活躍してきた実績もあるとのこと。STANDARDについての詳細はこちら

実際、研究室でディープラーニングを研究・実践している学生はかなりいて、筆者自身も交流会などに参加しても、若い人材の活躍が目立つのを感じます。

希少なAI人材をめぐっての採用争いが激しくなっている現在、中途採用ではなく、学生の新卒採用・インターン生の青田買いを狙う企業も増加中。「学生マッチング」はそうしたニーズに対して、非常にフィットするアプローチと言えます。このような、若いAI人材を輩出していくプログラムが増えてゆけば、日本の将来も明るそうですね。

日本のAIをめぐる法体制・議論の現状

Preferred Networks CSO 丸山宏さんは『AI ガイドラインセッション 法務編』と題し、日本における、法体制やAIをめぐる議論の現状についてお話してくださいました。

AIを学習させるためデータを集める際、やはり気になるのは著作権の問題。ただ、日本の場合、著作権法47条第7項によって情報解析の目的であれば、複製と翻案が認められるとのこと。(2017年9月現在)
一方、海外では研究機関でなければデータセットの提供を受けづらかったり、ヨーロッパではデータの使用は研究用途のみに限られていたりと制限が厳しいそうな。そうした制約も少ない日本は、機械学習を行うにあたりかなり恵まれた環境にあるようです。

さらに気になるのは、AI開発時に指針となるようなガイドラインの存在。丸山さんによれば、2016年12月に提案された総務省の『AI開発ガイドライン』には、AIの言葉を明確に定義をしていなかったり、実効性のあるガイドラインとして開発者に責任を負わせたり、透明性・説明可能性を求めたり……などの内容があり問題が多かったとのこと。
強いAIか弱いAIかも明確にせず、深層学習にあたっては自然現象のような一面もあり説明可能性についてはとても難しく、非現実なものでした。

今年2017年7月には『国際的な議論のためのAI開発ガイドライン案』というものが登場。
こちらでは、AIを「データ・情報・知識の学習等により、利活用の過程を通じて自らの出力やプログラムを変化させる機能を有するソフトウェア」と定義。さらに「開発者尊守するものではなく、留意するにとどめる」ような非拘束的なソフトローとして提案されているようです。

ビジネス活用においては、法務的な観点も不可欠。法体制や指針もまだしっかり固まっておらず、判例も出てこないなかでは、こうした動きにもしっかり注目していきたいですね。

圧倒的な中国の存在感。いま本当に日本に必要な人材とは?

株式会社UEI 代表取締役社長兼CEO 清水亮さんは、国際的なAIの学会イベントである『IJCAI-17』のことをメインにお話してくださいました。

IJCAI-17で特に多かったのは中国の参加者だったとのこと。セッションについても登壇企業名こそGoogleやMicrosoftですが、登壇する人自体は中国の方が多かったそう。

対して日本の状況ですが、人工知能系の研究室はまだディープラーニングを受け入れないところも多いのだとか。むしろ、医療などのまったく他分野の研修室がディープラーニングをどんどん活用しているそう。清水さん曰く、日本が世界と勝負するにあたって、今後こうした“AIを道具として使う”活用側の人材を増やすことが重要になるだろうと仰っていました。

UEIが行っているディープラーニング講座でも、一番積極的にいろんなことを試していたのはなんと小学生の子なんだそう。理由としては、先入観がないからとのこと。AI活用という観点では「とにかく楽しんで取り組む人・試行した人が勝つ」と仰っていました。

たしかに、何ができそうなのか・どういうデータを集めればいいのか、を考えることができれば、正直年齢も学歴も関係ない領域ですよね。AI開発の敷居が下がったり、そうしたワークショップの広がりにも期待です。

ChainerMN正式リリースといった見逃せないアップデートも

テクノロジーアップデート

今回発表されたテクノロジーアップデートは、ざっくり下記の通り。

  • Preferred Networksからは、分散処理に特化した ChainerMN 1.0.0 の正式リリース
  • Microsoftからは、FPGAを活用した『Project Brainwave』の発表

詳細は割愛しますが、全貌はスライドをご覧ください。

地方イベントも開催予定

さらに、Deep Larning Lab の地方イベントも開催予定! スケジュールは下記のとおり。なんとNVIDAも共催し実際に手を動かせるハンズオンもあるようです。筆者も参加してみたい……

開催日 イベント
2017/09/13(水) 12:00〜 Deep Learning Lab × NVIDIA DLI in 福岡
2017/09/25(月) 12:00〜 Deep Learning Lab × NVIDIA DLI in 大阪
2017/10/02(月) 12:00〜 Deep Learning Lab × NVIDIA DLI in 名古屋
2017/10/10(火) 12:00〜 Deep Learning Lab × NVIDIA DLI in 札幌

 
今回も各方面のプロフェッショナルから濃いお話を聞けたDeep Learning Lab、AIのビジネス活用に関する多くのヒントを得られました。
今後も引き続きウォッチしていこうと思います。次回のレポートもお楽しみに!

岡田 孟典 by
AIのリアルを追う、“やってみた”ライター兼エンジニア。過去には、海外向けにチャットボットをリリースした実績もある。エンジニアとしての成長も目指して日々奮闘中。