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ディープラーニングを生活の当たり前に。LeapMindが日本から“世界標準”をつくりだす

webファースト・モバイルファーストの次は、『AIファースト』の時代と言われるぐらい、注目を集めるディープラーニング。

画像認識・自然言語処理といった領域の発展で、これまで難しかったことも、機械で認識可能になりました。ただ、まだまだ我々の生活の中に根付いてるとは言えません。高価なGPUが必要だったりと、かなり敷居が高い。

その敷居をさげて、ディープラーニングを“生活の当たり前”にする。そんなことを日本から仕掛けている LeapMind(リープマインド) という企業があります。

優秀な研究者(リサーチャー)・ハードウェアエンジニア・ディープラーニングエンジニアが多く所属し、日本から世界にむけてディープラーニング・プラットフォームの発信を計画中。多額の資金調達も行い、現在非常に勢いがあります。

今回は気になる、

  • どうやってディープラーニングを普及させていくのか
  • 今後どういう展開をしていくのか
  • ディープラーニングが当たり前になった世界観とは

といったことを直接伺ってきました。お話を伺うのは、LeapMind株式会社 代表取締役CEO 松田総一さん。よろしくおねがいします!

LeapMindが掲げるキーワード『DoT(Deep Learning of Things)』とは

―早速ですが、LeapMindはどういった取り組みをしているのでしょうか?

―松田
一言でいいますと、ディープラーニング技術をコンパクトに、シンプルに、することを目指しています。

機械が複雑な現実世界を理解するためには、ディープラーニングの技術が不可欠です。
ただ、ディープラーニングにも問題があって、それはサイズが大きいこと・高消費なことです。

なるほど。たしかに、自動運転技術では消費電力が大きな課題になっているという話もありますよね。

ただ、消費電力という観点でいえば、IBM WatsonやMicrosoft Cognitive Servicesのようなクラウドソリューションを活用するという選択肢もあるかと思います。これらとくらべて、LeapMindの取り組みは、どういう立ち位置にあるのでしょうか。

―松田
クラウドだとインターネットにつながっていないといけません。

インターネット接続が難しい場合や、リアルタイム性が必要な場合には、クラウドではカバーできないんです。

LeapMindは、クラウドとは逆の方向を目指します。我々は、省電力で小型のディープラーニング専用チップを設計・さらにチップ用のアプリケーションプラットフォームを現在、開発しています。

これをあらゆるモノに組み込み、モノのディープラーニング化『DoT(ディープラーニング・オブ・シングス)』を広めていきます。

既に、ドローンやルームライトにチップを埋め込み、画像認識を可能にするといった事例があるそう。ドローンのDoT化は災害時にも役立ちそうですね。

IoTに注目が集まるなか、さらに先を行くLeapMind。

確かに考えてみると、海・地下・空など、インターネットがつながりにくい環境は、意外と多いです。さらに自動運転といった分野では人命を扱うわけですから、リアルタイム性は必須。

なるほど。DoTは、ネットが当たり前になっていて、多くの人が見逃していた領域かもしれません。

GPUではなく、あえて専用チップを使う理由

―ディープラーニング専用チップであれば、クラウドにも勝るということですよね。そのチップについて、くわしく教えてください。

―松田
我々が使っているのは、回路のプログラミングが可能なFPGAというチップです。

FPGAは何度でも書き換えることができ、目的に応じて最適な設計をすることができます。我々はこれをディープラーニングに最適化させているんです。

いまでこそディープラーニングのスタンダードになったGPUですが、もともとはゲームなどの映像用。専用に最適なものを設計するとなれば、パフォーマンスにも期待できそうですね。

―松田
GPUだと300Wぐらい必要な処理が、FPGAだと1〜4Wほどで可能です。

速度もCPUの50倍ぐらいの速さが出せますね。

嘘かと思ってしまうぐらい、圧倒的……!

ところで、気になるのは、学習させたモデルのサイズ。

学習モデルの大きさは、数百MBを超えるようなサイズになります。場合によっては、さらに別のハードウェアを必要とする場面・クラウドのほうが現実的な場面もあるのではないでしょうか?

―松田
我々が独自に開発したライブラリ『JUIZ』によって、学習モデルを圧縮し、このチップに書き込むことができます。圧縮後の容量は約100KB代になりますので、そういった心配もいりません。

なるほど。JUIZとFPGAチップさえあれば、余計なことを一切考えずディープラーニングの恩恵を受けることができるというわけですか……。

―松田
さらにFPGAは安価なので、世にある大量のモノを、DoT化することが可能です。

現在のディープラーニングが得意とするのは局所的で単純な問題です。

なので、チップを増やして問題を分散的に解決させ、最終的に大きな問題を解くといった使い方も考えられますね。

なんか聞けば聞くほど、驚くばかり。

処理の数が増えてきた場合、クラウドであれば回線が混雑しリアルタイム性に欠けるはず。高度な問題の解決や、シビアなパフォーマンスを要求される場面で、FPGAを使うLeapMindのアプローチは多いに役立ちそうです。

ひゃー、勉強になります。

プラットフォーム『JUIZ』が、ディープラーニングをアプリのように普及させる。

―さきほどお話に出てきた『JUIZ』が気になりすぎます。詳しく教えてください!

―松田
『JUIZ』はハイレベルディープラーニングライブラリです。Tensorflow, Chainer, Theano, PyTorch などで書かれたコードを変換・圧縮し、我々が開発した『Blackstar』に書き込むことができます。

ニューラルネットワークとFPGAの両方のプログラミングも学ぶことは非常に難しいんですが、JUIZがあれば個人・企業問わず、ワンストップで行えます。


▲Blackstarのコンセプト図

―松田
さらに『JUIZ App Store』というマーケットプレイスも展開して、個人・企業問わず、誰でもJUIZで作成したディープラーニングモデルを公開・利用し合える場を提供していく予定です。

▲JUIZ App Storeのイメージ図 (2017年6月現在)

 
まさに、スマホアプリのような感覚でディープラーニングを活用できるというわけですね。ディープラーニング開発に参加できる人口がとても増えそうです!

―松田
現段階では、結果を推論するだけですが、今後はチップ上で学習ができるようにします。

それもあともう少しという段階まで来ていますので、楽しみにしていてください!

チップ上で学習ができれば、ますます便利になることはもちろん、強化学習でのドローン自動運転などといった夢も広がりそう!

なんだこれ、ワクワクがとまらん。

「機械を意識しない」ディープラーニングが当たり前になった世界観とは

―話が大きすぎて、いろいろと衝撃を受けているんですが、これからLeapMindが実現したい未来像ってどんなものですか?

―松田
人間が機械を意識しない生活ですね。

ディープラーニングは、生活のあらゆる場面に適用できます。たとえば、スイッチがない電子レンジとか、体調が悪いときに自動で教えてくれる家具とか……

スイッチやUIを意識しなくても、機械が人間の生活を豊かにしてくれる。

そういった世界観が実現できるのではないか、と考えています。

まさにアニメや漫画のような世界観……! でも、Blackstarが大量に広まったとすれば、現実味のある話。改めてディープラーニングってすごいですね。

―松田
そうですね。それこそディープラーニングはインターネットと同じぐらい、広く応用できる重要な技術だと思いますし、5年もすれば当たり前になると思います。

それまでの過程に、量産化体制や標準規格といった基盤は必須です。

MicrosoftがWindowsでパーソナルコンピューターを広めたように、我々は『JUIZ』でその基盤を作り日本発でディープラーニングの民主化を世界中に広めていきたいです。

変化の大きい時代だからこそ、そこにチャンスがある。いまこそ日本から世界標準を作りあげていくというビジョン、なんだか刺激を受けます。

ここまでプラットフォームとして構想を完成させている企業は他にないので、それこそ普及は時間の問題な気も。日本にこういったスタートアップが存在することは、同じ日本人として勇気をもらえますね!

松田さん、お忙しいところ誠にありがとうございました。


AI戦国時代。いまでこそハードウェアはGPU一人勝ちですが、LeapMindが力を入れるBlackstar、Googleが開発したTPUなど……

この市場にも、世界的に大きなパラダイムシフトが訪れそう。AI戦国時代の覇権を握るのは誰か、今後の動きに要注目です。

岡田 孟典 by
AIのリアルを追う、“やってみた”ライター兼エンジニア。過去には、海外向けにチャットボットをリリースした実績もある。エンジニアとしての成長も目指して日々奮闘中。