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コミュニケーションを可視化するSlack bot『A;』にみるチャット時代の新しいチームマネジメント

おはようございます。河村です。

突然ですが「ピープルアナリティクス」ってご存知ですか?

GoogleやFacebookなど世界の先進企業も実践しているんですが、チームメンバーの行動データを収集・分析し、生産的で満足度の高い働き方などを導き出す手法のことです。

日本でも関心が高い企業は多いと思うんですが、実際に取り組んでる企業は少ないと思います。簡単に導入できないですしね。

ただ、そんなピープルアナリティクスを手軽に可能にしちゃう「A;」っていうSlack botがあるんです。

Slack上で会話をしているだけで、チームのコミュニケーション状況やメンバーの関与度、そして感情の分析までしてくれる、とのこと。

しかも現在「A;」は無料で利用可能。かなり興味深いので実際に使ってみました。これやばいです。

独自の解析エンジン「GRATT」でチームを可視化

「A;」は、チームの会話を自然言語処理技術を使って分析し、以下3つの視点で可視化してくれるSlack bot。

  • チームの「つながり」
    チャットコミュニケーションをすべて定量化。メンバー間の関与や熱意の度合いをグラフで可視化。
  • チームの「感情」
    チームメンバーのコミュニケーションを、文脈も加味し、感情の強弱を「ニュートラル」「ネガティブ」「ポジティブ」という3つの指標で解析。
  • チームの「行動」
    「#a」というタグをつけたコメントを「デイリーレポート」にすべて自動収集。メンバーの業務中の気づきや進捗を可視化。

裏側では、独自に開発された解析エンジンGRATT(グラット)」が使われているとのこと。GRATTは言語解析技術に加えて、感情評価・発話者、時間・サービス名、絵文字、 #a の有無などを組み合わせて評価してくれます。
しかもほぼリアルタイムで解析可能なようにプログラムされているらしく、技術力の高さにはとにかく驚き。

対応言語も日本語のみならず英語にも対応してるので、国際的なプロジェクトにも使えて嬉しいですね。

……と文章で説明してもあまりイメージ湧かないのも正直なところだと思うので、さっそく使ってみます!

チームをひと目で把握! 見やすいグラフを自動生成

使い方は、SlackとA;を接続するだけで超簡単。A;のサービスページからSlackへの登録をして、解析したいチャンネルを2つ選択。
これだけで設定は完了。あとは自動的にチャンネル内の会話を解析して分析してくれます。

いろいろな機能があるので、それぞれ簡単に説明します。


「つながり」「感情」がひと目でわかる

分析結果は以下のグラフ。

コメント数比率マップでは誰の発言に対して、誰がどのくらいの割合で反応してるかも可視化されるので、メンバー間の関与状況が容易に把握できてしまうという。これはスゴイ。

グラフはチームだけでなく、個人単位でも分析してくれています。

横軸は時系列、縦軸はコメント数。

チーム全体がネガティブぎみなのか、ポジティブなのか定量的に把握できるのはもちろんですが、個人レベルでも分析してくれるのでマネジメントツールとしてかなり良さそうです。


「行動」も、その場でサクッと記録

「行動」の可視化に役立つのが、レポート機能。コメントに#aをつけるだけで、botが自動的に収集・記録。管理画面で確認することができます。
もちろん他メンバーのレポートを閲覧・コメント可能。日報につかったりメモとしてつかったりと、さまざまな使い道がありそう。

他サービスとの連携で、効率アップ

Googleカレンダーとも連携可能

ちなみにGoogleカレンダーと連携もできるようになっており、Slack上でメンバーの予定をbotに聞くことができるのでとても便利です。

Slackから離れないで、いろいろと完結するこの感じ。すごくいいですね。


GitHubとの連携機能もリリース間近!

さらに、GitHubとの連携機能も2017年5月下旬にリリース予定とのこと。自分だけでなく、チームメンバーの「コミット」と「プルリクエスト」一覧を見ることができるそう。

チームメンバーのコミットが見れれば「この人、発言多いけどあまり働いてないな……」「この人、発言は少ないけどめっちゃ仕事してる!」なんてことがわかったりするかも。

人事評価の大きな助けになりそうですね。

コミットとは
コミットとはソースコードを変更しました、ということを表す単位。単純には言えませんが、この数によって、プロジェクトへの貢献度を測ることに役立ちそう。

というわけで、特徴をまとめると

  • Slackでの会話のネガポジ判定
  • 誰と誰がどういう会話をしたか定量化
  • チームの状況も個人の状況も確認可能
  • 気づきの記録や報告に使える、レポート機能
  • GカレやGitHubへの連携も

というカンジ。マネージャーにはとても嬉しいチャットbotだと思います。

A;に使われている解析エンジン「GRATT」は今後は幅広いプラットフォームで作動する解析エンジンとして拡大を考えているそうです。

たしかにやれることを考えると、Slackに限った話じゃないですもんね。

そして、なにやら産学連携による開発案件も進んでいるとかで……。

もっともっとこのプロダクトのことを知りたい! というわけでLaboratik IncのFounder/CEO 三浦 豊史さんに取材をさせていただきました。

三浦さん、よろしくお願いします!

多様な働き方に伴って必要とされるボット「A;」

―チームワークを可視化する、というSlackボット「A;」はどのような課題感から生まれたサービスなのでしょうか?

―三浦
そもそも私の起業のきっかけが、「ビジネスを通じて社会課題を解決すること」で、その中でも興味を持っている社会課題は、日本の労働生産性の低さです。

1つの切り口として、ファクトとデータを使って働き方を変え続けることが生産性を上げる主要な方法だと思っています。

勘や属人的な経験ではなく、ファクトとデータを使って、例えばSlackのような「チームコミュニケーションの関門」をデータ解析することで、チームのコミュニケーション特性や感情傾向をもとに生産性を一瞬で可視化できると考えたことが「A;」の開発のきっかけでした。

考えてみれば「なるほど」という感じなのですが、コミュニケーションをデータ解析して定量化することは、チームの状況を正しく把握するために必須。

チャットによるテキストでのやりとりが今までのメール文化より加速する今、「A;」はまさに現代の新しいマネジメントツールと言えます。

すでに100社以上の企業が導入しているという状況もうなずけます。

―三浦
ありがとうございます。

大企業からの問い合わせも数十件いただいており、中でも新規事業部、経営企画部、人事部の方々に関心を持っていただいています。「これまでの働き方を変える」ということが課題になっていることも背景の1つかと思います。

クラウドワーカーやリモートワークなどのバーチャルな働き方が日常的になっている現代のサポートツールとしても必要とされている印象がありますね。

そもそも大企業でもSlackが使われはじめている事実はかなり意外……。

やっぱり、多くのコミュニケーションが行き交うSlackというチャットプラットフォームを抑えてしまうのは大きいですよね。

「A;」が見る、データ分析の先にあるビジネスチャンス

―「A;」にはこれからどんどん面白いデータが溜まっていきそうですし、今後そういったデータを活用することで新しい機能なんかも考えられそうですね

―三浦
そうですね。今後の機能としては蓄積したデータから、チームのコミュニケーション特性をMonthly, Yearlyなどのスパンで比較できるようにしていくつもりです。

また、弊社のプロダクトはbotなので、チームの傾向についてのナレッジをbotに認識・予測させ、危険な兆候が表れたらチームメンバーに通知するなどのアクションもおこなえるようにしたいと考えています。

チームがどのような傾向にあるか、危険な兆候は何か、なんていうものは可視化されたデータがあるからこそわかること。

勘だけじゃわからない事を予測・通知してくれるのは、チームだけでなく、チームが関わる事業や業務など多くに関連するリスクを減らしてくれるので、非常に助かります。

―三浦
現時点では、ボットも、ビジネスチャットも、世界的に見てもまだまだ黎明期にあります。

ただ我々自身が日々利用しながら確信していますが、今後AIを中心としたテクノロジーの進化と、ビジネスチャットの利用慣習の深化が相伴うことで、これまでの働き方そのものを大きく変える要素になっていくと思いますね。

ボットもビジネスチャットもまだまだ黎明期というのは納得ですが、そこにどんどん仕掛けていくところを見ると、やはりまだまだ大きな可能性が眠っている。ということは間違いなさそうです。

こないだ参加したイベントでSlackの人が言ってたんですが、意外にも日本のSlackの利用者数は、世界でも3番目に多いんだとか。

そう考えると、もっと日本企業が進出できる余地があり、今後が非常におもしろい領域で興味深いです。

すべての事柄をデータ化できる時代の到来

いまや、これまでは難しかった事柄までほぼすべてをデータ化できる時代、といっても過言ではありません。

その中でも目に見えない、コミュニケーションをデータ化するという発想は非常に新しいと感じました。

コミュニケーションの分析データは比較的新しいデータだと思いますし、そこに既存のデータを組み合わせることでよりおもしろいデータが生まれそう。

いずれチームマネジメントはそのようなデータを元にすべて自動化なんてこともなきにしもあらず。

そういう意味でも「A;」にはさらに突き進んでいってほしいですね。

三浦さん、お忙しいところありがとうございました!

河村 健司 by
ライター兼エンジニア。海外でのフロントエンドエンジニア経験を経て、ビットエーへ。主にチャットbot関連の情報を追いつつ、自分で試しつつ、なんなら自分でも組んじゃう。なんてことをやったりする。