発想と実装の間をつなぐ AI:人工知能特化型メディア

常識を壊す王道的アプローチ。KIRINデジタルマーケの『個をマスにする』施策コンセプト

こんにちは。野原です。

今回は、2016年のマーケティング界隈で話題沸騰となった缶チューハイ「氷結」シリーズの色々とハジけた取り組みの仕掛け人である、キリン株式会社デジタルマーケティング部 高柳さんを直撃。

ぶっとんだ企画の裏側には、マーケティングの王道であるユーザーファーストな施策を緻密に実践した経緯がありました。

高柳 裕行:キリン株式会社デジタルマーケティング部所属。誰でも漫☆画太郎が書いた風の似顔絵を作れるサービス「あたらしく☆画たろう」や、旅する氷結®などの仕掛け人の一人。

発想の起点を変えた、これまでの常識とこれからの常識

―早速ですが、氷結の話を聞きたくてうずうずしています。どうやってあの企画たちが出てきたんですか?

―高柳
ありがとうございます。正直、チームでもここまで反響があるとは思ってなかったんですけどね(笑)

「今の若い人にどうやったら受け入れられるんだろう?」という思いから大きくコミュニケーションの転換を測った結果だったので、本当にありがたいです。

氷結のリニューアルを機にブランドイメージを強化しよう!という思いから2016年2月にブランドのコミュニケーションそのものを一新。

コミュニケーション戦略、タッチポイントとなるメディアも含めて思い切って変えていこう
若い人たちの感性を活かしたコミュニケーション設計をしよう

とまぁ結構思いっきりなコンセプト変更によって生まれたブランドワードが「あたらしくいこう」だったんだとか。

―高柳
ちょっと極端に言ってしまうと、「あたらしくいこう」は、すっぴんや変顔をSNSに載せる文化の流行に着目して生まれたワードなんです。

若い世代のトレンド行動を『普段の日常では見せない自分を見せる楽しさ』として解釈。これが共感やシェアを産み、SNSなどの新しいコミュニケーションにつながるのでは?みたいな発想でしたね。

普段の日常では見せない自分……。確かに、今のSNSとかを考えるとそういった文化ありますね。

普段とは違う『自分ですらまだ見たことのない一面を楽しむ』文化があるのではないか?と予測し、ここに刺さるようブランドのコミュニケーションを設計していったんですねぇ。。。いや、すごい思い切り。

で、そこに氷結発売開始当初からのアイデンティティ「Always New」といった要素をかけ合わせて生まれたのが「あたらしくいこう」ってコンセプトだった。と。

なんだか、こういった裏側の話を聞くとワクワクしますね。さらに続いて聞いていきます!

意外性 × 見つけた感の演出が意図的なシェアを生む

―コンセプトが決まっただけだともちろん今回のようなアイデアはでてこないですよね。人に話題にしてもらう上で意識したポイントってありますか?

―高柳
デジタルに関しては『人に思わず言いたくなる』『話題にしたくなる』というコミュニケーションを意識しています。難しい課題ですが、ある程度方法があるんじゃないかと思っています。

そういって高柳さんに教えていただいたコミュニケーション設計の要点は以下の3つ。

  • 「あたらしくいこう」のコンセプトの基、普段とは違った一面を見せる楽しさを表現する
  • 思わず話題にしたくなるように、「見つけてもらう場所」にこだわる
  • ブランドのコンセプトを体感できるように「参加できる体験」を用意する

ん…んんん…?

ちょっとこれだけだとよくわかりませんが、それぞれ氷結のブランドコミュニケーションの中にどう活かされていたのか、具体的に手順を追って説明していただきました。

例としてあげていただいたのはこちら。


『旅する氷結®』:最近話題にもなったので覚えている人も多いかも?

今年の3月に公開され、大きな話題になった俳優、高橋一生さんのCM。「あー!覚えてる!」って人も多いかもですね。

―高柳
『普段と違った一面を見せる楽しさを表現する』に関しては、もう何かそのままですね(笑)去年手がけた”学者のさかなクンさんにサックスを吹かせてみた”なんかがこれにあたります。
―高柳
で、「見つけてもらう場所」にこだわるに関しては、例えば上記の高橋さんのCMは分かりやすいかなと。

あえて期間限定のInstagramアカウントを開設して高橋さんのファンが見つけた時に嬉しくなるようなオフショットを掲載しています。もちろん高橋一生さんが個人で始めたものだと誤解を生み、世の中を騙すようなことは避けたかったので、きちんと期間限定のプロモーションである旨をプロフィール文に記載しました。

情報感度の高い層を意識して『見つけた人が自慢したくなる』というシチュエーションをユーザーのスマホの中に作り上げていったんです。

施策と連動させた高橋さんのInstagram。わずか1ヶ月程度でフォロワー数は60万人近い数字にまで達している。


―高柳
広告をユーザーに押し付けるのではなく、自分だけが知っている「レア感」を感じてもらってつい友達に話題にしたくなるようにこだわっています。

見つけたときにちょっとした「レア感」を感じてもらい、つい友達に話題にしたくなるような演出にこだわりました。それが最後の『ブランドの自分ごと化』の部分になっています。

なんと…そんな仕掛けが。。。

ユーザーが自分で見つけることで『自分だけが見つけた!』といった、自然と自分ごと化でき、シェアしたくなる気持ちと瞬間を創り出すことを徹底…ですか。。

なんというかこれが、デジタルコミュニケーションの新しい形なのかもしれませんね。(ディズニーの「隠れミッキー」とかもこれと同じような考え方。多分。)

決め手がない時はターゲットユーザーに聞け

―最後の自分ごと化のところは、他の企画でも重要になりそうですね。

―高柳
そうですそうです。他に自分ごと化がうまくいった事例が、漫☆画太郎さんとのコラボ企画ですね。
自分の顔写真を投稿すると、漫☆画太郎さん風の似顔絵を自動で生成してくれる「あたらしく☆画たろう!!!」という企画を実施しました。

みなさんこの「あたらしく☆画たろう!!!」企画、ご存知です?

発想から何からぶっ飛んでいて、「え?ちょ、KIRINどした……?」なんて思ったのは、きっと僕だけじゃないはず。(>> 参考記事


もうこの画像だけでやばい。 ※現在はクローズ済み

実際、企画を通すのも内部でかなーり苦労されたそうですが、最終的な決め手はユーザーに近い人が決めるべきと判断。

ターゲット外の社員の意見ではなく、担当の広告代理店さんに行っていただいたターゲットユーザーへのアンケートで人気となったことが決め手だったとか。

なにそれ格好良い。

―高柳
コンセプトである「あたらしくいこう」って便利なワードが社内に浸透していたのも大きかったですね(笑)

あの企画が『ユーザー1人ひとりをメディアとして捉えるべき』っていう、僕らのブランドコミュニケーションにおける軸みたいなものを決定づけてくれたような気がしています。

ユーザー1人ひとりをマスな拡散力を持つメディアとして捉え、流通させるコンテンツを『自分が発見したもの』として提供すること。

そのために「シェアさせやすい形のコンテンツとはなにか?」を徹底的に考え、かつユーザーにスルーされないためにはどうあるべきなのか?を詰めていく。

で、その議論や意思決定を「あたらしくいこう」ってコンセプトでまとめ上げて実行に移した…てことですか。本当、悔しいほど上手い施策ですね…。デジマラボ編集部もほぼ全員が当時使ってましたし。

王道的に教科書的に。カスタマー志向へ振り切った功績

―いやしかし、改めてすごいことをやっていたんですね。実際、自身で振り返ってみて感じることなどありますか?

―高柳
いやー、どうなんでしょうね。僕らがやったのって、なんていうか『当たり前のこと』なので。

個別に見るとぶっ飛んだネタ企画に見えるだろーなーとは、思いますけどね(笑)

―高柳
まずブランドの課題を数字から分析して、課題を発見すること。

で、そこからユーザーのニーズは?生活スタイルは?消費トレンドは?と要素を分解して、『ならどう届けるべきなんだ?』というコミュニケーション設計へ落とし込んでいくこと。

言ってしまえば極めてオーソドックスなマーケティング手法なんですよね。結局。

3C分析で言うところの「カスタマー(顧客)」の本当のところを考えられるか?

そしてそこから、どこまでチームの意識をそろえていけるか。

『徹底したユーザー目線』なんて言ってしまえばありきたりですが、そこまでを当たり前に行い、その上で手段を振り切ることこそが重要なんだ。

終始控えめに照れながら語ってくれた高柳さんでしたが、その言葉の裏側にある『本気』みたいなのがビシバシ伝わって、なんだか体温が上がってしまったインタビューでした。

これからも面白い企画が出てくる予感しかしない、氷結のブランドコミュニケーション戦略。1人の消費者としてもマーケターとしても、より楽しみになりました。

高柳さん、お忙しい中ありがとうございました!

ではまたー。

野原 千聡 by
アパレルECのプレス職からIT業界へキャリアチェンジした経歴を持つ異色のライター。スマートフォンアプリのディレクションやマーケティングを担当する傍ら、2017年よりBITA デジマラボへライターとして参画。MAをはじめとするマーケティング関連の自動化技術と現場ノウハウをメインで扱う。 現在本業では株式会社アカツキのマーケティングチームに所属。