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御社、まだクラウドAIだけですか? Microsoft, NVIDIAも注力してる“エッジAIコンピューティング”まとめ

高い注目を浴びるIoTですが、最近IoTとAIを組み合わせた『AIoT』という言葉も出てきました。こちらは、IoTでモノとインターネットを接続し、さらにクラウドでAIに処理をさせて、さらにいろんなことをやろうぜ!というもの。

クラウドAIといえば、Google、Microsoft、IBMなどのソリューションがあり、比較的IoTデバイスへの導入が容易です。しかし、いざ現場で運用してみると実はクラウドだけだと困るケースも……

そんな運用上の課題を解決するべく、ビッグネームの企業たちがこぞって“エッジAIコンピューティング”に力をいれている模様。今回はこのトレンドに乗り遅れないよう、背景や事例をご紹介します!

クラウドだけだとダメ。モノ×AIは、リアルタイム性が重要

ところで、そもそも何故クラウドだけだと困るのでしょうか……?

たとえば、車をAI化する自動運転車。

急に人が飛び出してきたときに、すぐにブレーキを踏まなければいけませんが、運転中つねにインターネットに繋がるとは限らないし、通信速度が遅かったら大変なことに。クラウドは導入が容易ですが、リアルタイム性が必要なケースではむしろネックになるんですね。


▲無人自動運転バスが、歩行者を検知して止まる様子

そのほかにも空・海・地下といった、インターネットが繋がらない場所はまだまだたくさんあります。厳しいセキュリティが求められ、インターネットに繋ぎたくないケースもあるでしょう。そんなケースの解決策として最近盛り上がりを見せているのが、モノ側(エッジ)でAIを動かす“エッジAIコンピューティング”です。

ビッグネームもどんどん参入!組み込み向けハードウェアの事例たち

モノのAI化でネックになるのがパフォーマンス。筆者もラズパイでいろいろ試していますが、込み入ったことをするとどうも処理が遅い。そんなハードウェアの消費電力や処理速度といった課題に対し「ならば、専用ハードウェアを作ってしまえ!」というイケてる事例たちをまとめてみました。

ラズパイ
正式名称はRespberry Pi。簡単にいうと、すごく小さなパソコン。カスタマイズ性が高く、個人でも手軽にIoTなどを始められる。

 


もちろんNVIDIAだって参入。お得意のGPUで乗り込んできた


http://www.nvidia.co.jp/object/embedded-systems-dev-kits-modules-jp.html

NVIDIAが仕掛けるのは『Jetson』という小型コンピュータ。例えるなら「GPU積んだハイスペックなラズパイ」的存在で、エッジ特有のパフォーマンスという課題をお得意のGPUパワーで解決してしまおうという製品。んーーー、ブレれない所がいいですねNVIDIA!
今年発売されたTX2は、前作より大きな進化を遂げているとのこと。今後もかなり期待できそうです。

 


Microsoftも負けてない。ラズパイ向けの『ELL』や、ぱんくずサイズのチップも独自開発


https://blogs.microsoft.com/ai/2017/06/29/ais-big-leap-tiny-devices-opens-world-possibilities/

Microsoftだってぶっこんできました。学習済みモデルを圧縮し、ラズパイのような非力なマシンでも快適に動作可能にする『Embedded Learning Library』というライブラリを開発。
さ・ら・に、パンくずサイズの極小AI用チップも開発中とのこと。これならどんなモノにも埋め込み放題。えーと、MSさん…… ちょいと、とばしすぎじゃないですか? これからもその調子でお願いします!

 


Intel傘下のMovidiusが発表したUSBデバイス『Neural Compute Stick』


https://www.movidius.com/

こちらは、AI処理専用のコンピュータを積んだUSBデバイスです。これに、Caffeで学習したニューラル・ネットワークのモデルを圧縮して保存し、エッジ側のマシンに接続。これで接続先マシンが非力でも、画像認識や物体検出といったAIによる推論処理ができるというわけですね! 使用デバイス側にはUbuntu OSがインストールされている必要があり、主にラズパイ向けを想定している模様。

Caffe
Barkley Vision Learning Centerが開発した、画像認識に特化したディープ・ラーニング向けライブラリ。歴史が長く利用者も多い。

 


推論だけじゃなく学習も? 日本発で世界標準をねらうLeapMind


http://juiz.leapmind.io/

こちらは日本のスタートアップ、LeapMind。ディープ・ラーニング用に最適化されたFPGAを搭載したAI専用チップ『Black Star』を開発。さらには『JUIZ』というプラットフォームを世界展開も見据えて構想中。
マーケットプレイスも設け、個人・企業問わず、誰でもJUIZで作成した学習済みモデルを公開・利用し合える場を提供していく予定とのこと。そしてさらに、将来的にはエッジ側で学習もできるようにする計画があるのだとか。日本にこんな企業があるなんて胸アツ!

FPGA (field-programmable gate array)
回路のプログラミングが可能なチップ。これをディープ・ラーニング用に最適化することで、省電力・快適な速度でAI処理が可能になる。
もっと知りたい方は、LeadMind CEOのインタビュー記事をどうぞ
>> ディープラーニングを生活の当たり前に。LeapMindが日本から“世界標準”をつくりだす

選択肢はクラウドだけじゃない。現場・実運用に照らして最適な選択を

物体検出AIはもちろんですが、GANなどの画像生成系AIも、視界が悪い環境・低解像度の画像を復元するなどでの用途でビジネス活用の兆しが見えてきているそうな。もしそれらをドローンや車などエッジ側で撮影する動画に適用するとなれば、やはりリアルタイム性が必須。

今後、大きな情報をすぐに処理したいケース・人命に関わったりするケース・工業系の領域では、リアルタイム性の課題はどんどん浮き彫りになってくるはず。現場での実運用ではクラウドだけで全て解決というわけではないので、ケースに応じて最適な選択肢をしたいですね!

岡田 孟典 by
AIのリアルを追う、“やってみた”ライター兼エンジニア。過去には、海外向けにチャットボットをリリースした実績もある。エンジニアとしての成長も目指して日々奮闘中。