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MA×SFAで契約率10%アップ。短期間で導入&立ち上げ成功のDonutsに聞いた『ツールに使われないコツ』

MA導入にあたって、運用の体制や仕組みづくり、さらには構想を落とし込んだり、シナリオ作成に困ったり、いろいろな悩みを抱えてるかたがいらっしゃると思います。

ただなんといっても一番のハードルは運用に乗せるまでのところ。導入したはいいものの、そこでつまづいてしまい、あまりMAを動かせてない……なんて企業の話もちょくちょく聞きます。

ということで今回は、MAだけでなくSFAも同時期に導入し、立ち上げに成功、組織への引き継ぎも短時間でスムーズに済ませ、成果もきっちり出したという凄腕:株式会社Donutsの篠崎惇史さんに詳しくお話を伺ってきました。

インタビュイー:篠崎惇史さん
セールス・CS・開発部門のマネジメントから、マーケティング戦略やディレクションまでを幅広くこなす、ジョブカン採用管理 事業責任者。
ジョブカン:
創業期から成熟期まであらゆるステージ・規模に対応するバックオフィス支援クラウドサービス
http://all.jobcan.ne.jp/

ジョブカン採用管理:
企業の採用業務の効率化と戦略的な採用を支援するクラウド採用管理システム
https://ats.jobcan.ne.jp/

契約率10%アップ。驚異的なSFA×MA両方立ち上げ

―もともと導入された理由はなんだったんですか?

―篠崎
会社が成長し、ジョブカンの事業も拡大していく中で、営業管理に課題がでてきてしまったんです。それぞれのメンバーがローカルで顧客の管理を行っていたため、一元管理ができていませんでした

企業規模が、大きくなるどこのタイミングでツールをいれるか。ベンチャーではよく聞く話。

課題となってきた一元管理をおこなうためにSFAを導入することに決めたそうですが、「管理はできるが、営業的な効果は数字として出にくい」ことをネックに感じていたんだそう。そして、解決法を探した結果、Marketoにたどり着いたんだとか。そして同時導入に踏み切ったと。

単に一元管理をできるようにしただけでなく、SFA×MA施策の運用まで行なった結果、それまでのフォロー漏れやフォローしきれない案件に対応ができるようになり、なんとプロダクト契約率が10%もアップしたそう。

同時に複数の施策をまわしていたそうなので、10%アップという数字がMA×SFAの施策の力だけではないとはおっしゃってましたが、それにしても大きな改善です。

SFAとMAの片方を導入するだけでも大変なのに、しっかりと両方立ち上げて成果も出す……。どんなことをしてそんなことを成し遂げたのか、深掘りしていこうと思います。

キモは最終系のイメージをちゃんと持つことができているかどうか

―ご自身ではツールの導入がうまくいった理由ってなんだと思いますか?

―篠崎
うちの場合、ツールをいれることが目的ではなく、最終系のイメージに向けて組み立てていったからうまくいったのだと思います。セールス的な感覚で結論が出ているものをMAに落とし込んでいくと最短距離でいけますよ。One to Oneのマーケティングを実践しようと思った場合、元々ユーザーと直接商談を行っているセールスの感覚をそこに落とし込むというのは自然な発想だと思っています。

導入すること自体が目的になってしまうケースも失敗としてはよく聞きます。そこはもともとの課題を分解して、「この部分にMAを使う」という明確なゴールがあったからこそ、運用のポイントや課題が最初から見えていたということなんでしょうね。

気になるのは他のメンバーにどう普及させたか? というところ。導入して成果を出したはいいものの、MAが属人化してしまい手から離せなくなってしまった……というのもあるあるですし。

―篠崎
もちろんすぐに全員がSFAやMAを使うようになったわけではもちろんありません。内部でもMA自体の認知度がなかったので、「MAとは?」「なぜ自社にとってMAが重要か」といったところから内部勉強会などを開催しました。

やっぱりそういった地道な、内部向けの施策も必要なんですね。自分たちに必要だと思ってもらえないと、運用にはのらない。

勉強会だけでなく、篠崎さん自らマニュアルも用意して内部で知識を共有していったんだそう。こういったツールって一方的に「今日から使って」となりがち。そこでしっかりと工数を使って、周りも納得させた上で運用に入る。なんとも理想的な導入だったんだな、と聞いていて感じました。

聞いていて面白かったのは、ジョブカンのMAチームの編成。ジョブカンではMAの運用はマーケティングの部門でなくセールス部門で行っているんだそう。感覚的にはMAというよりはセールスオートメーション、というイメージなんだとか。

ジョブカンのセールス部門は、ヒアリング能力に特化した少数精鋭で動いているため、どのような施策を打てばユーザーを動かすことができるかを感覚的に把握できている。そのために、MAを使って課題解決ができるところまでつながったのだと思う……と篠崎さんは振り返っていました。

社内引き継ぎのコツは「できるものからコツコツ」

―MA運用の引き継ぎの期間はどれぐらいかかったんですか? そのときのコツとかも気になっています。

―篠崎
大体半年ぐらいですかね。
ハードルの低い、コンテンツの準備やメール配信といった作業から教えていって、できるようになった人には、ナーチャリングのやりかた、キャンペーンフローの作り方といったものへと難易度を上げていきました。地道ですが、それが重要ですね。

―篠崎
コツとしては、やっぱり使っている本人たちが便利だと思ってもらうのが一番だと思います。
そのために「これで管理してるからいままでと違ってこういう風にまとめやすくなったよね」「ダッシュボードを使ってレポートを見るといままで見えてなかった情報がこんなに簡単にだせるんだね」といった声掛けも意識的に行っていました。

まずは自分ができるようになる。そこから周りを巻き込んで、できることから少しずつ渡していく。そしてその際には本人たちが納得した上で使わせる。

文章で書くと、なんとも王道なやり方ですが、それをちゃんとやり切るのはみなさんもご存知の通り、非常に難しいところ。それを実直に実行できたのが、篠崎さんの敏腕なんでしょうね。

ちょっとしたテクニックとしては、使っている本人たちが便利だと思ってもらえるように、こちらでコントロールできる部分はする、といったところでしょうか。ダッシュボードをメインにした会話とかはまさにそうですよね。細かい部分ですが、勉強になります。

MA運用は手法ですらない。あくまでツール

篠崎さんが言うには普通の会社の場合、MAの導入をスムーズにやるには4人くらい必要だそう。具体的には、

  • スケジュールや全体感を把握して、総合的にMAの導入をディレクションできる人
  • セールスやマーケティングの課題を取りまとめて施策として提供できる人
  • ロジカルな考え方で、シナリオに落とし込んでいく
  • マーケターとしての発想でコンテンツを用意したり、実際手を動かして設定をしていく

これらのメンバーがいるとわりとスムーズに進む一方、逆にそれを特定部門だけで完結させようとするとなかなか難しい、と仰っていました。

―篠崎
MAはあくまでツールであって、手法だと勘違いしてはいけないというのが持論です。

「マーケティングオートメーションをやっている」ではなくて、「マーケティングオートメーションを使ってどんな施策を行っている」という発想があるべき姿ではないでしょうか。

特にMarketoなんかのMAツールは、どんなふうにも使える万能ツールになってるので、やりたいことや課題感がはっきり出ている場合には本当に便利に使えるツールですね。導入するのであれば、自社のセールスやマーケティングの課題をしっかり認識して、そこをいかにこのツールを使って解決できるか、という考え方をするとスムーズにいくんじゃないかと思います。

課題を全く抱えていないセールス・マーケティング部門は無いと思うので、MAを使う価値は必ずどの会社にもあるはずです。


  • すごい成果が出たっていう企業もちょこちょこ聞くし……
  • 競合のあの会社も使っているし、導入しないと遅れるかも
  • ちょっと予算余ってるし、使ってみるか

導入を検討している理由としてはいろいろあるとは思うんですが、ツールありきではなく、そのツールを使うことで課題の解決ができるかどうか? というポイントをちゃんとおさえられるかどうか。やっぱり大事なところはそこなんですよね。

ツールを検討するときに、そのツールを使うと◯◯ができる、とかそういった方向で考えがちですが、その観点を失うとツールに使われる側になってしまいます。

なんとも耳が痛い話が続きましたが、改めて大事なことを再認識させていただきました。

篠崎さん、お忙しいところありがとうございました。

野邊 大樹 by
日本生まれのカンボジア&エチオピア育ち、もちろん英語はビジネスレベルでペラッペラという謎に満ちた人。途中で文転した元ゴリッゴリの理系脳という、このメディアのために産まれてきたかのような男。