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Facebook、Twitter同等のMAU率を誇るAIビジネスマッチングアプリ『yenta』の裏側を聞いてきた

転職サイト『Green』、AIとビッグデータ解析を活用した採用サービス『TalentBase』、組織改善プラットフォーム『wevox』でおなじみの株式会社アトラエが運営する、AIビジネスマッチングアプリ『yenta』。

yentaを使ってるとわかるんですけど、自分が会いたい職種やスキルを持った人が本当にレコメンドされるんですよね。

というのも、AIがうまくプロダクトに使われているからなんだそう。

一体どこでどのように使われているのか、どんな仕組みなのか、気になりませんか?

しかもサービスのMAU率はFacebookやTwitterと同等なんだとか……! これはかなりおもしろうそうな話が聞けそうです。

ということで、yentaの裏側を開発責任者の岡 利幸さんにお話を伺ってきました。

岡 利幸:株式会社アトラエ 取締役CTO、yenta開発責任者。創業初期から参画し、営業から開発まで幅広く活動。

yentaって?

インタビューにいく前に、知ってる人も多いとは思うんですが、yentaについて簡単にご紹介します。

yentaは、完全審査制のAIビジネスマッチングアプリで、Tinderのビジネス版とイメージしてもらえるとかなり分かりやすいかと。

yentaの機能をざっくり紹介するとこんな感じ。

  • AIが毎日10人をレコメンド
  • 会いたい or 会いたくないをスワイプで選択
  • 毎日マッチングの結果が届く
  • マッチングしたら、メッセージでやりとり

スワイプで興味あるなしを選択。マッチングした相手とは直接メッセージのやりとりができる

ちなみにレコメンドは毎日12時、マッチングの結果は20時にわかります。

お互い会いたいと思ってるので、メッセージではランチの予定などを決めて……

というのがyentaのざっくりとした概要。

ただ普通のマッチングアプリとは目指しているところも、サービスの仕組みもかなり特殊です。

そのあたり含め、さっそくインタビューでいろいろ聞いていきましょう!

岡さん、よろしくお願いいたします。

自社サービス「TalentBase」のAIによる解析で最適な人をレコメンド

―最初からざっくりした質問で恐縮ですが、yentaのどの部分でAIが使われているんでしょうか?

―岡
AIはレコメンドの際に使っていますね。

このユーザーが会いたい人はあのユーザーだろう、という部分をコントロールしています。

ただそのレコメンドの基準というか、技術的な部分ではあると思うんですけど、どんな仕組みでレコメンドされているかがすごく気になっています。

というのもyentaを使えば使うほど、会いたい人が増えていくんですよね。それはたまたまなのか、もしくは自分の感度が鈍ってきているからなのか(笑)

気になるところです。

―岡
yentaを使えば使うほど会いたい人が増えていくのは、たまたまではありません(笑)
AIによってどんどん最適化されているんです。

実はyentaでAIを利用することになったきっかけは、自社サービスのTalentBaseでの研究開発があってのことなんです。

yentaのレコメンドの仕組みはTalentBaseで培った技術や思想をもとに作っています

ここで簡単にTalentBaseについて説明すると、FacebookやTwitter、Github、Qiita、compassなどの活動データを分析して、その人がどんなユーザーなのか、どういう人と強い繋がりがあるかなどを可視化。HR領域に役立てるようなサービスです。

自社で活躍している人と近い行動属性のユーザーを自動で探すことができたり、採用担当者にとって、かなり嬉しいサービスになっています。

んー、となるとTalentBaseのレコメンドロジックの部分が気になります!

人と人の繋がりをグラフ化する独自の解析手法

―ではTalentBaseによる解析の手法というか、具体的にどんな仕組みなんでしょうか?

―岡
非常に複雑なので、抽象化して説明すると、その人のパーソナリティを分析するにあたって、ソーシャルメディア上でのユーザー間の矢印の太さ、方向、というのを中心に分析してます。

なんというかGoogleのページランクの仕組みに似たものを、人に適用したイメージになります。

Googleではどのサイトを上に表示するか、といったところでどういったサイトからリンクが付いているか、どのくらいの量ついているか、という部分を重視しています。

TalentBaseでも、その人のアクティビティに対してどの程度いいねやコメントがつくか、という指標だけでなく、

  • どのくらい影響力ある人とつながっているか
  • その人との関係値はどの程度か。どのくらいの頻度で相手からのアクションがあるか

などからそのユーザーのランク(っぽいもの)を算出しているそう。

となると、単にいいね数が多いだけのいわゆる“バズらせ屋”的な人は、いいね数は多いけど、その元となる人の重要度が低ければyenta、TalentBase的にはそこまでランクが強くならない、ってこと。

この解析手法だと擬似的に、ビジネス領域でいわゆる強い人のランクが上がっていく仕組みなんだとか。

―岡
あとは、もちろん個々人が「会いたい」「会いたくない」と判別したデータがあるので、その情報も加味して、レコメンドを行なっています。

それもあって、数字で示すのは難しいのですが、実際相性が良い人がレコメンドされる割合は高くなっていく仕組みになっています。

最初は300人というかなり少人数のユーザー数でyentaをはじめました。その分密度も濃かったんですが、今はユーザー数は10,000人を超えました。審査をお待ち頂いている方も同じくらいいるんですが、今でも右にスワイプ(会いたい)される率は、リリース当初と変わらないか高くなってきています。

ちなみに審査の通過は、そのユーザーがyentaを使ったときにサービスを楽しめるかどうか、他ユーザーとの相性や属性のバランスなどの観点で判断しているんだそう。

それにしても約10,000人の審査待ちって、さすがMAU率でFacebookやTwitterと肩を並べるだけあります。

そのyentaが今後何を目指しているのかも、気になります。

yentaでのマッチングはオープンイノベーションを加速する

―抽象的ではあるんですが、yentaを通して何を実現したいのか、今後のビジョンというか、何を目指しているのかお聞きしたいです。

―岡

結論からいうと、あらゆるビジネスを加速させるインフラを作りたいと思っています。

何か新しいビジネスやプロジェクトを始めたいと思ったときに、今の日本の状況では、一緒に活動する仲間を探すことや、そのアイデアをブラッシュアップするためのメンターとか壁打ち相手と会える仕組みが整っていないと思っています。

人脈がすべてだとは思ってないですが、やりたいことができたときに、それを加速させる仲間やメンターがいるほうが、圧倒的に動き出しや成長のスピードが早いのは自明でしょう。

ただ、日本にはLinkedInのようなビジネスSNSがあるわけでもないので、日本のどこにどんな専門知識や経験を持った人がいるのかが、ブラックボックスになってしまっていると認識しています。

―岡
yentaがインフラになっていけば、お互いに興味を持ったもの同士が弱い繋がりのネットワークができ、何かやりたいことができたときに、その活動を加速させてくれる人をyentaでの繋がりから探して、すぐに会って話したり議論したりできるってわけです。
経営学とか組織論の領域で「トランザクティブメモリー」という概念があって、組織の記憶力を最大化させるには、全員が全てを同等に記憶しておくのではなく、それぞれが記憶している内容のインデックスだけを記憶し、○◯の内容はあの人に聞けばいい、という状態になっている状態が大事だという話なんです。

私はそれを日本全体に拡張して、日本株式会社のような組織と捉えて、日本のどこにどんな情報やスキルを持った人がいるかを、記憶できるような弱くて広い繋がりのネットワークを作ることで、日本全体に「知性のネットワーク」を作りたいと考えています。

―岡
また、yentaは単に経歴や職種が似ているからマッチングというのではなく、あえてユーザーが想像もしていないような出会いも生まれるように工夫しています。いわゆるセレンディピティですね。

もちろん経営者同士など、精度の高いマッチングは技術的には実現可能なんですが、出会いを最適化しすぎてもつまらないと思っています。

まったく別の業界、職種なんだけど、意外と会ってみたいと思えるだろう人などをあえてレコメンドしたりもしています。例えば、経営者とエンジニア、起業家と医師とか。

実際にユーザーさんからのフィードバックの中でも、完璧ではないマッチングが、いわゆるセレンディピティに繋がったりして、普通に生活していたら絶対に一生会えなかっただろう人とyentaで会えて、いい刺激や新しい発想を得られたりするという話が多かったりします。

普通に生活してても会わないような人に会うことで、新しい価値が生まれるってことですよね。それこそ、こういったアプリを活用することで初めて生まれる可能性な気がします。

具体的にはyentaユーザーから、そういった出会いに対していろいろな感謝の声も届くんだそうです。

―岡
ユーザーさんから直接たくさんの声をいただいていて、例えば、yentaで出会った人と起業したり、出資につながったり、顧問やビジネスパートナーに出会ったり、yentaから採用につながったケースもたくさん生まれているそうです。

それこそyentaは、最適化するHRTechではなく、ヒューマンリソースを最大化するHR Tech領域でもあるのかなと勝手に捉えています。

最近では、IT領域ではないユーザーさんも多く見かけるんですけど、IT領域以外の方がyentaを使っているのは意外でした。

―岡
最近は、ITだけではなく、メーカーやコンサル、クリエイティブ領域のユーザーさんも多いですね。なんか言い方は変ですが、いい意味で異質な方をいれると新しい価値が生まれて面白いんです。

当然バランスは重要ですが、オープンイノベーションのように、対極の人、つまり政治家と民間の人とか、輪からでていないスペシャリティを持った人同士がつながって、新しい価値が生まれる、そういう世界観はyentaが目指しているところです。

チームとAIを駆使して、ビジョンにフルコミット

改めてお話し聞かせていただくと、yentaってただのマッチングアプリじゃないんですよね。

人と人との繋がりで新しい価値を見出す、そしてその出会いもAIによってしっかりと目指す方向へコントロールしているところ、素晴らしいです。

個人課金のビジネスモデルはあるものの、チームが5人ということもあり、マネタイズよりも、とにかく少数精鋭でサービス向上、目指す世界の実現にコミットしているそう。

ユーザー数もどんどん増えてきて、さらに加速していくyenta。これからどうなっていくのか、本当に楽しみです!

岡さん、大変お忙しい中ありがとうございました!

>> yenta App Store

>> web版( β )はこちら

河村 健司 by
ライター兼エンジニア。海外でのフロントエンドエンジニア経験を経て、ビットエーへ。主にチャットbot関連の情報を追いつつ、自分で試しつつ、なんなら自分でも組んじゃう。なんてことをやったりする。