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人と人をつなぐチャットボットで、日本人の意識と行動を変えたい。&HAND開発チームがbotで目指す未来

こんにちは、岡田です。

&HAND(アンドハンド)というチャットボット、情報ツウの読者の皆さんならご存知ですよね。そう、LINE BOT AWARDSで見事グランプリを受賞したあのbot。

LINE BOT AWARDS「&HAND」プレゼンスライド

簡単に説明しますと、障がいをもった困っている人たちと、手助けしてあげたい人たちを繋げる、というコミュニケーションデザインに挑戦したbotです。

「ん?? どういうこと?」と思った方、多いと思います。だって、botといえば自動でメッセージを返してくれるプログラム。要は「機械to人」で完結する世界ですよね。
botが人と人を繋げる?一体どうやって? なんだか、チャットプラットフォームの新たな可能性を感じる!
というわけで、開発チームの方々にお話を直接伺ってきました。

池之上智子さん
プロジェクトリーダー/UXデザイナー
タキザワケイタさん
サービスデザイナー/ワークショップデザイナー
久樂英範さん
インタラクティブプロデューサー
清水純平さん
bot開発エンジニア

「声かけづらい……」を取り払い、人と人をつなぐ。&HANDの世界観

―受賞おめでとうございます! 早速ですが、簡単に&HANDについて説明していただいてもよろしいですか?

―池之上
身体・精神的な不安や困難をお持ちの方で「困っている人」と、「手助けしたい人」をつなぐチャットボットです。

困っている人がLINE BeaconをONにすると、&HANDを友だち登録している手助けしたい人に通知をしてくれます。

LINE Beaconとは
LINEをインストールしたスマホが近づくと、スマホにコンテンツを配信したりできる仕組み。
ビーコン端末の有効範囲は数十メートルほど。店舗への来店クーポン配信などの活用が想定されている。

 
詳細を簡単に説明します。
 
前提として…

困っている人 → &HANDデバイスを携帯+スマホのBluetoothをON。
手助けしたい人 → スマホのBluetoothをON。

&HANDデバイスをONにすると…

困ってる人には → 「助けをよびますか?」
手助けしたい人には → 「今、手助けすることができますか?」

というメッセージが両者に通知。OKするとそこから会話開始。

メッセージのやり取りはbotを介して行うので、お互いの名前が知られることもないとのこと。

なるほど、botが人と人をつなぐ役に。さらには、プライバシー保護まで考えてのbot活用。今までにはないような、新しいbotですね……!

―池之上
「声をかけづらいなぁ」という壁を取り払いたかったんです。

これなら自分の名前もわからないですし、メッセージに返信するぐらいなら気軽にできますよね。

たしかにチャット形式なら、声かけのハードルも下がりそう。

ところで「手助けが必要です」という意思表示のために、ヘルプマークやマタニティマークってありますよね。それに加えて&HANDがあると何が良いんでしょうか?

ヘルプマーク
援助が必要です」と、周囲に意思表示をするためのタグ。見た目だけではわからない障がいや病を持った人のためにある。裏には、自分の症状や不自由なところを記入することができる。
画像引用元: http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shougai/shougai_shisaku/helpmark.html
マタニティマーク
こちらは妊婦さんのための意思表示タグ。主に、見た目だけではわからない初期の妊娠時期の人に向けてつくられた。
画像引用元: http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/boshi-hoken/maternity_mark.html
―池之上
主な利用想定シーンとしては、駅や電車など人の多い場所ですね。そういった場所では、マークを着けてても気づかないことが多いです。

&HANDなら、スマホに通知が来るのですぐわかります。

―タキザワ
さらに、視覚障がい者が近づくと駅員や警備員に通知が届く。という利用シーンも想定していますね。

電車の遅延や事故などが発生したとき、駅員さんはただでさえ忙しく、体が不自由な人まで手が回らないこともあるそう。ハードルを下げるだけではなく、きちんと気づけるための仕組みとしても有効なんですね。

「手助け」に境はない。どんな人でも使ってほしい。

―&HANDは、目と耳が不自由な人向けなのでしょうか?

―タキザワ
いいえ。

使う方に応じた複数のデバイスを検討しています。

こちらが、&HANDデバイスのプロトタイプたち。LINE Beaconを埋め込むことを想定しています。

それぞれ簡単に説明すると、以下の通り(左から)。

  • 筒状のもの: 目の不自由な人向け。白杖にとりつける想定。
  • ひし形の端末: 耳な不自由な人向け。クリップ型で好きな所に付けれる。
  • 腕輪型: 訪日外国人旅行者向け。
  • ヘルプマーク: 見た目ではわからない障がいを持たれている人などへのヘルプマーク使用者向け。カード型を想定。
―タキザワ
とくにヘルプマークは、&HANDと連携した使い方を想定しています。

ヘルプマークって症状や対処方法を書いたシールを裏面に貼ることができるんですが、その内容がbotで手助けする側のLINEに届く。という仕組みも実現したいですね。

▲ヘルプマーク向けデバイスは、ヘルプマークに重ねて掛ける想定で試作されている。

非常に良いアイディアですね、それなら円滑に手助けができそう。改めてITの可能性を再確認しました!

LINE+チャットボットだからこそできた。

―LINEである必然性ってなんだったんですか?

―久樂
&HANDの前身には「スマート・マタニティマーク」というプロジェクトがあったんです。

基本的なコンセプトは同じで、&HANDの妊婦さん版なんですが、アプリをインストールする必要がありました。

「スマート・マタニティマーク」ムービー
―久樂
こうした試みって、助けてくれる側の数が少なかったら成り立たない。さらに専用アプリが必要になってしまうと、わざわざインストールすることや、OS・機種に対応する必要がありました。

でもLINEなら、そういう心配もいらないんですよね。いずれはスマート・マタニティマークも&HANDに統合していく予定です。

LINEなら「友だち登録」するだけで済みますし、ユーザー数も圧倒的に多いのでピッタリ。そのほか、LINEならではのポイントってありますか?

―久樂
手助けの参考になる情報を、LINEのタイムラインに配信することを計画中です。

「手助けしたい」という気持ちはあっても、「どう助けたらいいの?」ということがわからない人って多いと思うんです。

&HANDが手助けしたい人を増やしたり・育てるという役割も担えれば。と久樂さん。
僕自身も、体の不自由な方を見かけると「何かしてあげたほうがいいのかな? でも、かえって迷惑じゃないかな?」なんて思うことよくあるので、配信が楽しみです。

じつはビーコンの全く新しい使い方だった

ところでビーコンって、施設内の位置情報取得に使ったり、工場の機械に着けて点検・管理に使ったりというイメージなんですが、「人が持ち歩く」って珍しいですよね。

―清水
そうなんですよ。これまでのビーコンって

人が物体に近づいたときに、何かをする」というのがメインだったんです。

まさに工業的な使われ方ですよね。



▲こちらがLINE Beaconの実物。矢印部分が本体なので、じつはけっこう小さい。

―清水
&HANDでは、
「人と人のコミュニケーションにビーコンが介在する」
という全く新しいビーコンの使い方になっています。

そこはLINE BOT AWARDSの審査でも評価されたポイントだったとのこと。botとしても新しい使い方なのに、ビーコンでも革命を起こしていたとは…… 本当に着眼点がすごいですね。

「最終的には、&HANDをなくしたい」 私達が、本当に目指すべき姿とは

―将来的にこうしていきたい。って想いはありますか?

―タキザワ
究極的な話をすると、私たちは&HANDをなくしたいんです。

“なくしたい”……?
開発者ご本人から、まさかの台詞が飛び出しました。えっと、、どういうことですか?

―タキザワ
&HANDやスマート・マタニティマークって、非常に日本人的だと思っています。

本来は、&HANDのようなツールがなくても助けあえる社会が理想じゃないですか。

「勇気を出せばいい」。それはみんな、わかってはいるんです。でも、一気に世の中を変えることはとても無理です。

―タキザワ
目標の達成には、小さな成功体験の積み重ねが必要だと思っています。

だから、まずは一回体験してもらう。そして、みんながこの問題について考えるきっかけをつくる。

&HANDは、社会に対する問題提起なんです。

日本人の意識そのものを変える。壮大な挑戦ですね…… でも1人1人が行動すれば本当に変えられそう。それこそ&HANDなら「友だち登録するだけ」ですもんね。

現在、&HANDはまだプロトタイプの段階ですが、2020年までに普及を目指し、協力いただける企業・団体・個人の方を募集しているとのこと。ただ、友だち登録は今からできるので普及したときのために備えておきたいです。

皆さんも、まずこの一歩を踏み出すところから始めてみてはいかがでしょう。
池之上さん、タキザワさん、久樂さん、清水さん お忙しい中、ありがとうございました!

&HANDの友だち登録はこちらから

&HANDのように「人to人」の視点スタートで設計すれば、チャットという形を最大限に活かしたbotがつくれるかも。そういう意味でも、できることの広がるLINE Beaconには期待大ですね。

それではまたー!

&HAND 協力に関するお問い合わせはこちらから
https://andhand.themedia.jp/
岡田 孟典 by
AIのリアルを追う、“やってみた”ライター兼エンジニア。過去には、海外向けにチャットボットをリリースした実績もある。エンジニアとしての成長も目指して日々奮闘中。