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AI研究のレジェンド甘利俊一とコージェントラボのCEOが語った人工知能の課題と未来

おはようございます、デジマラボ編集長の飯野です。

Tegakiのリリースを近くに控え、13億を調達したことでも話題になったコージェントラボ。デジマラボでも仲良くさせていただいていますが、先日こんなリリースが。

コージェントラボは理化学研究所脳数理研究チームでシニア・チームリーダーの甘利俊一氏をリサーチ・アドバイザーに迎えました。

これはビッグニュース・・・! この2人はどんなお話をされるんだろうか……?

ということで、甘利先生とコージェントラボ代表取締役 飯沼さんの対談をセッティングしていただき、理化学研究所に行ってきました。

立場の違う2人が語った、人工知能の課題と未来とは。それではスタートです。

甘利俊一:理化学研究所脳科学総合研究センター脳数理研究チーム シニア・チームリーダー、東京大学名誉教授、文化功労者など。
数理脳科学の世界的権威として知られており、今の人工知能ブームの裏には甘利先生の論文の再発見があったことが認められている。

飯沼純:コージェントラボの代表取締役。
コージェントラボでは世界10カ国以上からリサーチャー、エンジニアを採用し、最先端の人工知能に関する研究や技術を活用することで、日本から世界最高水準の商品・サービスを提供することを狙っている。

第3次ブームの裏に隠れた、市場との期待値の差

―人工知能、人工知能ってどのメディアでもよく聞きますが、このブームについてはどう思っていますか?

―甘利
ディープラーニングは突破口は開いたけど、あくまでもブームで終わってしまうとは思いますね。

できることはできる、できないことはできないが5年後ぐらいにはわかるんじゃないかな。当たり前の技術として5年ぐらいには定着すると思います。

今は、なんでもできるように思われている気がするけどね。そんなことはないです。

―飯沼
いまって、人工知能に対する期待度が非常に高いんですよね。

人工知能=ある程度依頼すれば、なんでもできるんじゃないか……みたいに一般では思われていると感じています。

ただそもそも、使わないといけない理由は何で、使ったときの利便性をどこにセットにするかというのが議論になっていないのは問題だと思っています。

よく聞く話です。イベントなどで人工知能系の会話を聞くと「どのアプローチしてるんですか?どういうNN使ってるんですか?」といったようなテクノロジーの話になりがちだな、と。

ただそれを解明したところで、本当にそれを使うべきか?というビジネス判断はできないんですよね。

―飯沼
課題があったときに、本当にそれをAIでやる必要があるのか?ということは考えるべきだと思います。そこはビジネスサイドの課題。

一方で、マーケットの人たちもテクノロジーをちゃんと理解する、という努力も必要だと思いますね。

ある程度の理解と今のビジネスニーズはなんなのか?をちゃんと理解していないと、とテクノロジーに使われるだけになっちゃいますし。

本当にそうですよね。人工知能は魔法のワードのようになっていますが、まったくそんなことはないです。

「人工知能を使って何かしたい!」というのが先に来てしまっていて、「そもそもの課題はなんなのか?なぜAIでやる必要があるのか?」というところは十分に議論されていないと感じています。

―甘利
なので、期待値をちゃんと合わせられる企業が大事だと思っています。

目的がないのに、流行ってるからやろう……となっているんだけど、それだとやりようがないんだよね。

そのマッチングの部分で、コージェントラボは出番があるんじゃないですか?

―飯沼
ありがとうございます。

技術をちゃんと翻訳して、期待値にうまく合わせていかないといけないというのは常々感じていて。

それは、新しい技術を世の中に広めていく上でのひとつの責任だとも思っています。

今の技術だとどこまでいけて、そこまでもっていくことによってお客様の課題や今のビジネスシーンに、どのくらいのベネフィットを生めるかってことをビジネス視点で会話できないとダメだと思います。

そういうことをできる企業が多くないからこそ、いままでのブームはブームで終わってしまったのかもしれないですね。

今回のブームは「ビジネスで実績が出てきた」というところが今までと大きく違うところ。だからこそ、市場の期待というのも今までのブームよりも大きいのではないでしょうか。

市場の期待値と、いま企業ができることはにはまだまだ乖離があります。少しずつそのあたりを調整していく作業が大きな意味を持つんでしょうね。

アカデミックとビジネスの融合を目指すコージェントラボの組織文化

―コージェントラボのメンバーにアカデミックなメンバーが多いこともそういった思いからですか?

コージェントラボのメンバーには博士号や修士号をもったメンバーが多く在籍する。8割は外国籍
―飯沼
そうですね。

テクノロジーをコアな部分でちゃんと理解していないと、そのテクノロジーをどうやってビジネス側にもっていけるか?というのがちゃんとマッチングできないんです。

―甘利
よくあれだけのメンバーを集めましたよね。

以前イベント(※)に登壇させていただきましたが、ああいったアカデミックなイベントをできる企業って少ないんじゃないんですか? 海外の方も多いですもんね。

私もそのイベントには参加させていただきましたが、全て英語で行われ、一般の人は全然ついていけないようなレベルのアカデミックな話をしているんです。

そこだけではなく、参加している人たちが積極的に質問をしていることにも驚きました。普通のイベントとは違う熱気があります。(なんとなく学生のときの研究発表を思い出すぐらい……。)


※以前コージェントラボでおこなった機械学習に関するイベントの様子。すんごい勢いで数式がでてくる
―飯沼
そういっていただけるとありがたいです。

入ってくるメンバーの話を聞くと面白いんですよね。

「自分たちは海外で勉強してきているので、コミュニケーションが英語でできる会社に行きたい。そうなると大手しかないのだけれど、大手に入っても自分たちの技術がちゃんとつかえるかわからない。」

コージェントラボについては、その両方を解決できる……と言ってもらえるんです。

―飯沼
そういったメンバーが入ってくるのは、メンバー同士の連鎖反応によるところが大きいんですけど、ビジネスって偶然の部分もどうしても多いので、そこにレバレッジをどうかけられるかは非常に大事ですね。

今回の甘利先生との出会いも、うちのあるメンバーが「イベントをやるなら甘利先生しかいない!」といったのがきっかけですし。

―甘利
本当にありがたいことですね、こういった縁は。

ビジネスとアカデミックの融合を目指す、という姿勢が企業として非常に面白いと思っています。

AIに定理は解けるが、定理は作れない。美意識がかかってくるから

―話を元に戻させていただいて……。期待値が非常に高いのってシンギュラリティみたいなことが言われてるのもあるのかもしれないですね。AIが意識をもつ、ということについてどう考えていますか?

―甘利
AIにサイエンスができるか?というところも議論になりますよね。

工場などを支配してテクノロジーを全て使うようになる……なんてことも話になります。

―甘利
AIがサイエンスをできるようになるためには、意識的にサイエンスをしようとならないとダメだと思っています。

なので意識を持つか、というところと密接に結びついています。

たとえば、AIで数学や定理は解けると思うんですけど、AIに定理が作れるかっていうのは微妙な問題。これには、美意識がかかってくるから。

「はい、これ証明しました」っていうだけじゃつまらないんですよね。

定理が解けるのと、定理が作れるのは別だと。なるほどですね。

最近は、AIが全てをするのではなくて、人の決定や仕事を手伝うポジションとしてのAIなんてのも注目されている気がします。

ではAIが定理を作る人間の手伝いをする……なんていうのはどうでしょうか。

―甘利
私はいまも自分で計算して、計算間違えばっかりしたりしていて(笑)

AIが手伝ってくれて「なに迷ってるの、答えはこれだよ」なんて言ってくれたらいいなと思わないこともないです。

人間の感情は進化の過程で必然。ただ、AIはそうではない

―甘利
ただ、失敗ってすごく大変だと思うんですけど、自分で苦労して間違えて、勘違いして……というステップがあって。

失敗が積もり積もって、初めてその先ができあがると思うんだよね。

なので、AIに手伝ってもらうっていうのも一時的には近道になるかもしれないけど、メリットデメリットあると思います。

―飯沼
数年後、AIは苦しみ自体を理解するんですかね?

何回も何回もトレーニングしても、全然答えがでない。そのあと答えがでたとして、それにかかった時間を苦しみとするのであれば、そこから生み出されたものは喜びだ。

みたいな感じで、そういう時間とか失敗とかをAIが理解できていて、それが大変だったんだということをちゃんと感情づけたりとか。

―甘利
人間はそういう喜びも苦しみも、達成感もあるよね。

ただ、人間が進化の過程で種として、社会に中に生存していくためには、個人の感情ももちろん必要なんだけど、社会との関係性も大事

人間の感情っていうのは進化の過程で、社会でうまくやっていくために必然だったと思うんです。

ただ、感情なんて人工知能が社会と接点を持つ上では、必要ないと思うんですよね。

といって、先生が例を出されたのは孔雀のこんな話。

  • 孔雀は、求愛のときに羽を広げる
  • 種を残すという意味では必要なのかもしれないが、その分外敵に襲われる可能性も増える
  • 社会的に合理的に判断をした場合、人工知能はそのような判断はしない
  • つまり、人工知能が仮に人間を駆逐したときに感情は絶対にないだろう

人間社会と、人工知能は全く違うものですもんね。甘利先生の話、改めて非常に考えさせられます……。

10年後のAIを見てみたい。テクノロジーが社会基盤を変える未来について

―社会との接点という観点で、今後人工知能はどうなっていくと思いますか?

―甘利
10年後のAIを見てみたいな、とは思います。そのときにどんな課題を解決しているのか。

AIを使うってことと同時に、今の社会が持っている矛盾、たとえば貧富の格差とかに対して技術がマッチングできるのかな、って思うんですよね。
技術としてはAIに限らずすごい技術がでてきて、利便性があがってきています。

ただ、AIによって金持ちがより金持ちになって、貧乏人がどん底に追いやられるっていう社会になったらいずれ崩壊しちゃいますよね。

―飯沼
だからこそ、テクノロジーを社会に提供するっていうチャレンジになると思うんですよね。

いろんな人たちが考える生活の豊かさと生活の仕方があって。
そこに少しずつでもいろんな形で違うテクノロジーが入ることで、少しずつその人たちが豊かになるんであれば、テクノロジーを広く社会に提供していくっていう意味は絶対あるだろうし、その格差という区別とか差別とか……そういう境界のないフラットな社会ができあがることによって、働ける環境がみんな平等に持てると思ってるんです。

そんな世界観をコージェントラボで作っていきたいですね。

―甘利
AIが仕事を奪うんじゃなく、AIが仕事を作りだすというイメージだよね。

どんな人でもAIを使うことによってさらに働ける……というふうになるといいな、と僕も思っています。


お二人の話はポンポンといいリズムで進み、他にもいろいろな話をうかがえたのですが、残念ながら文章の都合で割愛します……(それでもこの記事長いですが)

ビジネスとアカデミックを融合させるということにチャレンジしているコージェントラボ。そこに、甘利先生がアドバイザーに入ることで、もっとコージェントラボのいろいろなことが加速しそうな印象をうけました。

Tegakiのリリースも控えてますし、これからがますます楽しみです。

甘利先生、飯沼さん、お忙しいところありがとうございました。

飯野 希 by
BITAデジマラボ編集長。前職はメーカーのユーザビリティエンジニアとして活動。ビットエーではデータサイエンティストとしても活躍しつつ、デジマラボを軸をした事業開発をおこなう。