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リアル店舗のGoogle Analytics?オフラインの行動解析で産業変革を狙うABEJAの戦略

おはようございます、飯野です。

インタビューやセミナー・イベントにて人工知能関連の話を伺う機会が多いんですが、あちらこちらで「ABEJAがヤバい」って情報が耳に入ってくるんですよね。

そもそも何をやってる会社なの? どんなことやってるの?

気になっていつも調べるのですが、webにある情報からは判断できず……。なんだかリアル店舗内のデータ取得や解析などをするプラットフォームを提供しているようなのですが……?

こうなったら!と、代表取締役社長CEO兼CTOの岡田 陽介さんに直撃取材してきました。

店舗改善はあくまで全体のひとつ。狙うは産業構造の変革

―いきなりなんだか雑な質問で申し訳ないのですが、ABEJAさんって何をやられてるのでしょうか?店舗の改善……でしょうか?

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―岡田
我々は店舗改善をしているというわけではなくて。
IoT・Big Data・AIを使って産業構造変革を目指している企業になります。

第3次産業革命と呼ばれるコンピュータとインターネットの普及により、働き方や産業構造は大きく変わりました。

いまの時代コンピュータが止まってしまうと、全ての業務が止まってしまうほど、我々の生活に深く入り込んでいます。たとえば、医療現場や銀行の現場などで機械が止まることを考えると恐ろしいですよね。

第4次産業革命では、いまのインターネットやコンピュータのように、生活に必要不可欠な位置づけにIoT・Big Data・AIが来るとの予想の元、ABEJAではそのコアな部分を作り込んでいるそうです。

―岡田
産業革命で大事なのは一産業だけではなく、全産業にまたがるってことが重要なんです。

現在はリテール(小売)を中心にキーテクノロジーを活用したソリューションを提供しているそうですが、6月にダイキンさんとの連携を発表したように、今後は製造業などのいろんな業界に展開していく予定なんだそう。

なるほどなるほど。かなり大きな枠で話を進めてらっしゃるんですね……。

webでは当たり前になっていることがリアル店舗だと行われていない

―今はリテール中心にソリューション提供されているとのことですが、具体的にはどういったことをされているんですか?

―岡田
IoTデバイスの情報をクラウドで解析して、店舗の中での人の動きをデータ化しています。

たとえばECサイトだとCVとかを見ますよね?それをリアル店舗でしっかりと指標化していきます。

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いままで考えたことがなかったですが、web上で当たり前に見られているPVなどの数値って、確かにリアル店舗だと見えるようになっていないですよね。リテールではPOSシステムで取引数は見れるようになっていますが、何人店舗に来店しているとか、どのように店舗回遊しているかは判別できるようになっていません。

―岡田
これまではセンサーの値段が高すぎて、webだと簡単にできることも運用できていなかった。

それが今ではIoTセンサーが大きくコストダウンしているので、ほとんどお金をかけずともセンサーが設置できます。また、クラウドサーバーもほとんどコストはかかりません。低いコストで解析ができる技術的な土台ができてきたんです。

ABEJAが提供しているABEJA Platform for Retailでは、店舗に設置したカメラの映像を解析して、来店者数や、来店者の性別や年齢などの属性、エリア別の滞在時間・通行量をディープラーニング技術を用いて計測。計測したデータや重要な売り上げ指標をダッシュボード上でリアルタイムで確認することができるそう。

これってリアル店舗版Google Analyticsってことですよね。いままで見えていない数値が明確にわかることで、経営者や従業員もいままでと違う意識・違う目標を持って働くことができますし、明らかに売り上げにもいい効果が出るはずです。

たとえばwebサイトの運営にGoogle Analyticsが入っていなかったらと考えると……かなりゾッとしますね。逆にいえばリアル店舗の運営でも、今後当たり前に使われるサービスになる気しかしないです。

導入前と比べて、買上率が125%に!?

―使用料ってどんなもんなのでしょうか? サイトには5000円〜と書いてありましたが、ボリュームゾーンとしてはどのあたりですか?

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―岡田
ボリュームゾーンとしては1店舗あたり数万円ですね。

……思ったよりも安い。

料金体系としては用意するセンサーの数や、毎月送るデータ量でパッケージング化されているそうです。

なんだかこれだけ安くて、いままで取れていなかった指標が取れることによって数値が改善したら簡単にペイできてしまいそう。実際の効果とかはどんなもんなんでしょうか。

―岡田
あるアパレル店では、買上率が0.5%アップしました。

数値でみるとあまり大したことないように見えるんですが、アパレル店の買上率って元が2-3%ぐらいなんですよ。

買上率:来店客数に対する購入客数の比率

えーっと、それってつまり導入前と比べると、純粋に125%の売上になったってことですよね……? しかもそれが1店舗だけでなく導入店舗の数だけ掛け算されるとなると……相当大きいインパクトです。

目に見える効果としてもすごいんですが、やはり大事なところは、こういった指標を見ながら経営ができるようになることなんだそうです。店舗によっては今まで何人入ってきたかも把握できていないので、買上率という指標さえうまく数値化できていないところも多かったんでしょうね。

また、その数値もほぼリアルタイムで共有できるため、従業員の接客の評価なども抜群にしやすくなるんだそう。評価制度がしっかりしてくれば、売上にも確実に結びついてくるでしょうし、なんだか悔しいほどいいことずくめですね。。

IoTデバイスが置ける場所は限られている

―ビジネス戦略的な観点でもお話を伺いたいのですが、リテールから始められたのは何か理由があるんでしょうか?

―岡田
AIの分野ってGoogleとかFacebookの名前が上がりますよね。

ディープラーニングって情報量がすごく多くなるので、オンライン上のバーチャルデータだけで考えると、そういう大手企業に敵わないと思ったんです。

そういった考えから、今後リアルデータが重要になると予見し、彼らがもっていないデータをいかに集めてどう最適化するかいう考えを深掘りしていったんだそうです。

なるほど。そこでIoTデバイスなどを使ったソリューションに行き着くわけなんですね。

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―岡田
実は、IoTデバイスが置ける場所って限られているんですよ。

ということで岡田さんにお話していただいたのは以下の5つ。

  • 店舗
  • オフィス
  • 工場

オフィスや工場はセキュリティなどの問題もあり簡単には入れない。街にいきなり出るのは大変。ホームIoTはAmazonとGoogleが進出している。ということで見渡してみると店舗が空いていたんだとか。

そして、実際にコンシューマが一番利用するのは店舗なので、ここのデータがかなり重要になってくるはずとの予見から、やろうと決めたのが2013年のことだそうです。

2013年というと3年前。岡田さんがこのビジネスプランを考えていたときに僕は何をしていたかな……と思い返すとなんだか切なくなりましたが、聞くこと聞くことが全て論理的で、すごく納得してしまいました。

日本のリテールノウハウは世界一。アジアの企業は喉から手が出るほど欲しいはず

―今後の展開はどのようにお考えですか?

―岡田
グロースストラテジーとしては3つ考えています。

  • リテール業界でのカスタマーの深掘り・撹拌。
  • 他業種への応用
  • ASEANを中心とした海外展開

ですね。

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―岡田
特に海外展開については、今年中に海外に支社を立てようと思っています。

東南アジアっていま取り組んでいるリテールとの相性がすごくいいんです。

東南アジアではいま、結構な数のショッピングセンターが立ち始めているそう。しかしリテールのノウハウがないために、ショッピングセンターはオープンしているのに、店舗はオープンしていない……なんて日本では考えられないことが起きているんだそう。

それもそのはず。僕らは当たり前に思ってしまっていますが、日本はリテールノウハウが世界トップレベルなんだそうです。

日本のリテールノウハウの下地 + ABEJAが持っている科学的な手法を組み合わせて提供していけば、海外の企業は欲しくてたまらないはずですよね。

ダッシュボードの情報はビジュアライズデータなので、海外のユーザーも簡単に使えるようになっていますし、元々海外展開を念頭においていたこともあり、既に多言語化対応しており、ドキュメントは全て英語で書いてあるとのこと。

ビジネス的な観点でもビジョンがスパッと決まっていて、なんだか取材を受けながら取り残されたような気分になりました……。

おわりに

IoTデバイスを置ける場所の一つとして「街」があがっていましたが、既に東急電鉄と協業して街へのIoTの導入も進めているというABEJA。駅でこれ以上人が入ると危険だというアラートや、渋谷の街の混雑状況を可視化することで、空いているルートをレコメンドしたり……とライトな最適化がしやすいんだそう。

―岡田
コンシューマーの方が自由に行き来できるエリアは街と店舗です。ここを押さえれば強いと思います。

産業構造を大きく変える。インタビューの最初の言葉が、お話を伺うにつれてどんどん腑に落ちてくる不思議な経験でした。

ABEJAがGoogleやFacebookと並ぶ日も実は遠くないのかもしれません。思わずそう感じてしまうほど、岡田さんの話のひとつひとつに説得力とパワーがありました。

岡田さん、本当にお忙しい中ありがとうございました!

飯野 希 by
BITAデジマラボ編集長。前職はメーカーのユーザビリティエンジニアとして活動。ビットエーではデータサイエンティストとしても活躍しつつ、デジマラボを軸をした事業開発をおこなう。